当該年度は、ガスを抜くための真空ポンプ、循環ポンプ、供給用の昇圧ポンプが相次いで故障し、キセノンのガスラインに空気が混入する問題が発生した。キセノン中に不純物が混入すると、EL光量の大幅な減少、電子ドリフト時のアタッチメントによる消失が発生し、検出器の性能を悪化させるため、早急に対応が必要となった。真空ポンプは新調し、循環ポンプと昇圧ポンプは高圧ガスに対応した信頼性の高いものに交換、空気の入ったガスは液体窒素による蒸留を複数回行った。純度の判断のためにガス分析機RGAを導入しており、新品のキセノンには及ばないものの、ガス循環で何とか使用可能なレベルまで回復した。RGAを導入したことにより新品のキセノンの純度との比較や新たに設置した露点計で測定した水分量と検出器性能の相関を確認でき、定量的なガス純度の目標値を得ることができた。10L試作機では、シンチレーション光の収集率を向上させた検出器として、VUV-PMTを6個用いたTPCを作成した。全PMTからの信号波形をMPPCの信号と同時に取得するシステムを構築し、正しく動作することを確認した。その後、252Cf線源からの中性子を照射しデータ取得を開始した。しかしながら、TPCの放電により、低エネルギーの原子核反跳事象の抽出には至っていない。現在、対放電性の高いELCCとTPCケージを開発しており、それぞれ設計と試作を行った。また、産総研での中性子ビーム試験において、新たな目的としてミグダル効果の検証ができるかもしれないと考え、シミュレーションによる試算を始めた。複数の目的により、共同でのビーム試験が実現すれば、施設利用料や実験セットアップ構築などで他の実験グループと協力できると見込んでおり、研究を発展させていきたい。
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