研究課題/領域番号 |
18K13570
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
塩見 公志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (40648036)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電磁カロリメタ / 素粒子実験 / 粒子識別 / 測定器 |
研究実績の概要 |
近年開発されたGd3Al2Ga3012(Ce)結晶(GAGG結晶)の大型化の研究とともに、中性子とγ線の分離が可能なカロリメーターの開発を行う。GAGG結晶は添加物の濃度により時定数を調整できるという特徴があり、時定数の異なる2つの結晶を継いで使用し、波形データを記録することで中性子とγ線を分離できる可能性がある。その実証のために、Mgの添加していない10cmの円柱型結晶とMgを1%添加した10cm長の円柱型結晶を光学接着したものを作製し、電子及び中性子に対する応答を調べた。 本年度は平成29年に行なった電子ビーム照射実験の解析を進めた。その結果、ビームの入射位置により、波形が変化していることが確認出来た。そして、記録された波形の積分値と波形のピークの割合を調べることで、どちらの結晶で反応が起きたかを区別出来ることがわかった。秋には大阪大学核物理研究センターで中性子の照射試験を行い、中性子に対する応答を調べた。その結果、Mgを添加していない結晶では電子と中性子で出力波形に違いが見られることがわかった。一方で、Mgを添加していない結晶では電子と中性子に出力波形の違いは見られなかった。結晶長手方向にビームを照射したビームデータを電子と中性子の場合で比較したところ、記録された波形の積分値と波形のピークの割合を変数として使用することで、電子の検出効率94%に保ちつつ95%の中性子事象を排除できることを示し、中性子と電子が区別可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は中性子ビームの照射実験を行った。そして、平成29年に行なった電子ビームのデータとの比較を行い、電子の検出効率94%に対し95%の中性子事象を排除できることを示し、中性子と電子の分離が可能であることを実証した。これは本研究の目標の一つであった。また、中性子ビーム照射実験から、Mgを添加していない結晶では電子と中性子で出力波形が違うという新たな知見を得ることが出来た。この特徴は中性子とガンマ線の分離をする上で有効であり、この特徴も活かして中性子とガンマ線の分離能力の向上を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で中性子とガンマ線の分離能力は実証できたので、今後は中性子及び電子ビームの照射データを基に時定数の異なる2つの結晶のそれぞれの長さの最適化を行い、中性子とガンマ線の分離能力の向上を目指す。 また、小型カロリメーターの制作に向けて、長方形型の結晶を制作して、光量や長手方向の光量依存性の測定を行う。また、10cm長以上の結晶の作成の実現性について企業と協議を行い、可能ならばより長い結晶(15-20cm)も作成し、同様の測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は中性子ビームの照射実験に及び、中性子と電子の分離能力の実証を行うことに専念したために、費用が当初予定より少くなった。次年度使用額は長方形型の結晶や、10cmより長い大型のGAGG結晶の作製のために使用し、GAGG結晶の大型化に関する研究を進める。
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