本研究では、近年開発されたGd3Al2Ga3O12(Ce)結晶(GAGG結晶)の大型化を目指すとともに、中性子とγ線の分離が可能なカロリメーターの開発を行う。GAGG結晶は速い応答と高い光量を兼ね備え、原子核、素粒子実験の電磁カロリメーターの結晶として魅力的な結晶である。また、GAGG結晶の添加物の濃度を変えることでシンチレーション光の時定数を調整することが出来る。これまでにMgの添加していない10cmの円柱型結晶とMgを1%添加した10cm長の円柱型結晶を光学接着したものを製作し、電子及び中性子照射試験を行い、中性子とγ線の分離能力の評価を行なってきた。これらの研究結果から、Mgが添加していない結晶では電子と中性子の出力波形に違いが見られることがわかった。また、記録された波形の積分値と波形のピークの割合を変数として使用することで、反応位置を特性出来ることもわかった。以上二つを組み合わせることで、電子と中性子を分離可能であることが示せた。 本年度は上記の電子、中性子照射試験の解析結果をまとめ、日本物理学会及び国際学会Calorimeter for the High Energy Frontier 2019(CHEF2019)にてGAGG結晶を使用した中性子とγ線の識別方法の研究発表を行った。また、将来積層して電磁カロリメーターとして使用することを想定し、直方体のGAGG結晶を購入し、基礎測定を行った。さらにGAGG結晶の発光特性の詳細を調べるために放射光(分子科学研究所UVSOR)を用いた減衰時間測定の試験も行った。
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