研究課題/領域番号 |
18K13571
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
山田 美帆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (90714668)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | SOI / ピクセル検出器 / 高位置分解能 / 高放射線耐性 / MOSFET |
研究実績の概要 |
ピクセル内にアンプとアナログ信号を保持するためのメモリの他にヒットのタイムスタンプとそれらの制御に必要な比較器,メモリ切替用ラッチを搭載した試作チップ(SOFIST)のビーム試験を行った.多重散乱を抑えるために米国フェルミ研究所にて120GeV陽子ビームを用いた.現在,データ解析中でありSOFIST上のヒットの位置とタイムスタンプの検出に成功している.現地においてトラック再構成のためのテレスコープに不具合が生じ,テレスコープ上のヒット位置検出効率が非常に低い状態にある.ペデスタルやノイズが時間的に変動しており信号とバックグラウンドの弁別アルゴリズムを検討している.
また,放射線損傷回復機能のための電極を搭載したピクセルセンサーを試作した.当初はピクセルごとに高電圧印加のための電極を設置する予定であったが,テストチップにより別途特別な電極を設けずとも,電源配線と裏面センサー電極を利用することにより放射線損傷が回復し得ることを発見した.信号処理回路内のMOSFETのソースもしくはドレインのほとんどは電源またはグランドに接続されている.したがって,これら電源配線を0Vに固定することによりMOSFET自身を電極として酸化膜層上部を0Vに固定できる.センサー裏面は全体がアルミ電極となっているため酸化膜層下部はセンサー部を電極とすることにより高電圧印加が可能となり,トンネル現象を利用した正電荷除去が可能となった.
また,複数種類のMOSFETが搭載されているテストチップに対して1MGyまで4点ガンマ線照射を行った.照射によりドレイン電流特性が負方向へシフトしていることが観測された.現在,照射量に対するシフト量の定量化を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線照射後の回路動作シミュレーションのためのSPICEパラメータ見積もりがほとんど実施できていない.照射を行ったサンプルはBody-floatタイプのみであり,アナログ回路でよく使用されてるSouce-tieとBody-tieタイプの照射を実施できていない.MOSFETのプロセスパラメータが変更されたため,過去に試作,測定したMOSFETと特に放射線照射後の特性が大幅に変わっている.したがって,新プロセスパラメータによって作製されたMOSFETのサンプルをまず入手する必要があった.
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今後の研究の推進方策 |
位置分解能評価のためにテレスコープのヒット位置を効率的に検出するためのアルゴリズムを検討する.ペデスタルやノイズの時間的変動が目立つが,まず変動の範囲を切り分ける.フレーム全体で変動していればコモンモードノイズとして減算可能であり,ADCチャンネル毎に個性が見られればこちらもチャンネル毎に変動を見積もり減算可能である.これらはペデスタル分布上ではオフセットとして寄与してるだけであるので,減算は容易である.さらに小さい範囲では行,列,ピクセルごとであり,同様に系統的な時間的変位があればオフセットとして取り除くことが可能でありS/N向上が見込まれる.
放射線損傷回復機能のための電極を搭載したピクセルセンサーの納品は6月頃の予定である.納品され次第,放射線照射を行い,放射線照射前後,回復前後で性能評価を行う.イメージの撮像の他にアンプのゲイン等,回路性能の定量的評価も行う. また,新プロセスパラメータによって作製されたMOSFETサンプルの追加照射試験を行う.特にSource-tie,Body-tieのSPICEパラメータ見積もりのためのデータ取得を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関で所持している測定機器類を組み合わせることにより効率的な測定を行うことができたので,新たに高額な機器の購入が必要でなくなった.また所属グループで獲得している他予算により旅費を捻出したため予定していた旅費支出額を下回った.また,試作チップ代も同様に所属グループで獲得している予算から捻出されたため試作料の支払いがなくなった.
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