ILC実験用崩壊点検出器として高位置分解能,高放射線耐性をもつピクセル検出器の開発を行なっている.達成すべき位置分解能は3umである.プロトタイプであるSOFIST1ではピクセルサイズを20um角とし,電荷重心法により約1.4umの位置分解能を既に達成している.さらに,ピクセル内に必要な全ての回路を実装した,三次元積層型センサーであるSOFIST4を作製した.2枚のSOIセンサーを積層することにより,ピクセルサイズを20um角に保ちつつ,回路実装面積を拡張している.したがって,高位置分解能を達成しつつ,ILC実験用崩壊点検出器として動作可能な高機能信号処理回路を実装可能とした.120GeV陽子ビームを用いた試験により,ヒットの検出を確認した.また,SOFIST4とは別に用意した参照用センサーとのヒットの相関も観測できた.したがって,参照用センサーと同じタイミングで通過した同一陽子をSOFIST4でも捉えていることがわかった.この陽子によるトラックを再構成し,今後は位置分解能を再度評価する.SOFIST1と4はピクセルサイズが同じ20um角であるため,同程度の位置分解能が期待される.また,SOFIST4はDouble SOIウェハーを用いており,酸化膜層内にミドルシリコン層を持っている.SOIセンサーは放射線照射により酸化膜層に蓄積正電荷が発生する.この正電荷による電場が回路層のトランジスター特性を変え,回路の動作不良となる.しかし,ミドルシリコン層に任意の電圧を印加することにより蓄積正電荷による影響を打ち消すことが可能である.他SOIセンサーにて100kGy照射後のセンサー動作が回復していることを確認している.ILCで予想されている放射線量は年間1kGyであり,Double SOIであるSOFIST4は十分耐えうる.
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