本研究では、スピン偏極した不安定原子核からのベータ線の空間的非対称度を測定し、励起状態のスピンを精密に決定するという独自の手法をより多くの原子核に適用することを目指している。そのために、ベータ核磁気共鳴(ベータNMR)法において高速断熱通過法を用いて、スピン整列した原子核からスピン偏極を生成するという新たなスピン偏極の生成方法の開発を行う。それらの手法を組み合わせて、今まで励起状態のスピンなどのデータが限られている中性子過剰な原子核の詳細な実験データを取得することを目的としている。 昨年度上記の新たなスピン偏極法の実証に初めて成功し、およそ2%のスピン偏極を生成することに成功した。今年度はその再現を行うとともに磁場印加システムの最適化などを行う実験を行った。実験は放射線医学総合研究所 重粒子線がん治療装置 HIMACによりスピン整列した不安定核13Bを生成して行った。ビームは、昨年度と同様の条件となるように設定した。偏極生成の際に、ビーム停止素材の埋め込み位置や振動磁場の強度などについて最適な条件を探索し、最終的に昨年度のおよそ2倍の偏極度である4%のスピン偏極を生成することに成功した。加えて、振動磁場の掃印周波数の範囲を狭めることで、より詳細なNMRスペクトルを測定することができた。以上の結果から、本研究により中性子過剰な原子核のスピン偏極を生成する手法を確立することができた。この手法を用いて、理化学研究所で生成されるような中性子過剰原子核をより効率的にスピン偏極させることが可能となった。
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