銀河は周囲の環境から強い影響を受けながら進化していることが知られており、銀河進化の理解には宇宙の構造形成の観点からの研究も不可欠である。また、遠方宇宙に遡ることで、銀河進化・宇宙の構造形成の現場を直接的に調べることも重要である。この目的を達成するためにHSCサーベイというすばる望遠鏡の戦略観測を用いた原始銀河団探査を行った。 HSCサーベイによる大規模な原始銀河団探査と並行して、CFHTLS領域において同定された原始銀河団に対して追加の観測を行うことで個々の原始銀河団の特徴を理解するために詳細な研究も行った。赤方偏移4.9と3.7の2つの原始銀河団を新しく分光同定することができた。赤方偏移4.9の原始銀河団については3つの銀河から構成される小さな銀河グループが付随していることも分かり、原始銀河団を中心に大規模構造を形成していると解釈することができる。また赤方偏移3.7の原始銀河団については、別の銀河団がすぐ近くに存在することが既に報告されており、2つの原始銀河団がペアを作っている宇宙の大規模構造の中でも特に密度の高い領域と考えられる。この原始銀河団ペアの内部構造を調べてみると、1つは複数のサブグループが集まることで一つの原始銀河団を構成しているのに対して、もう一つの原始銀河団は中心集中した分布をしていた。これらの内部構造の違いは原始銀河団の形成段階の違いを反映していると解釈できる。これらの新たな原始銀河団の発見と、大規模構造や内部構造に関する議論を論文として報告した。
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