研究課題/領域番号 |
18K13578
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢部 清人 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (60749480)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光赤外天文学 / 銀河形成 / 銀河進化 / 星間物質 / 化学進化 |
研究実績の概要 |
昨年度にすばる望遠鏡を用いて行った分光フォローアップ観測で得られた観測データの解析を主に行った。観測ターゲットの選定方法はこれまでと同様であるが、Gemini望遠鏡によるフォローアップ観測のターゲットに比べてより低赤方偏移の天体のサンプルとなっている。解析の結果、計6天体について強い酸素の輝線([OIII]5007)が検出され、そのうち4天体では非常に大きな輝線等価幅を示し、金属量を精度良く測定するために必要な弱い酸素の輝線([OIII]4363)が有意に検出された。上述のGenimi望遠鏡で得られたデータと合わせると、[OIII]4363を用いて金属量が測定できる計8天体のサンプルが構築できたことになる。これらの強輝線銀河は同様の赤方偏移にある同程度の星質量を持つ普通の星形成銀河に比べ、星形成率が非常に大きく、全体的に低金属量であることが分かった。一部についてはいわゆるextremely metal poor銀河に分類されるほど極めて金属量が低い天体であった。また、極めて高い[OIII]/[OII]輝線比を示し、高赤方偏移のライマンアルファ輝線天体と同程度の値であることも分かった。光電離モデルとの比較により、このような輝線比を説明するためには高い電離パラメータが必要であり、電離源の推定を現在行っている。また、これまで分光フォローアップの結果を考慮して、このような強輝線銀河をより効率的に選択する手法を検討し、最新のHSCの観測データを用いて最終的なカタログの構築を進めている。これらの銀河はすばる望遠鏡Prime Focus Spectrograph (PFS)の良い観測ターゲットなると考えられるが、観測可能性や期待される科学的成果についても検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでにメインとなるターゲットの分光フォローアップ観測をGemini望遠鏡およびすばる望遠鏡を用いて行い、観測データの解析処理を終えた。輝線フラックスを始め様々な物理量の導出の解析もほぼ終わり、得られた結果を用いて強輝線銀河の形成・進化の過程について考察を行っているところである。すばる望遠鏡を用いた観測ではGemini望遠鏡で観測したサンプルよりも低赤方偏移のサンプルが含まれているため、このような銀河種族の赤方偏移進化が議論できると期待している。これまでの結果で、非常に大きな[OIII]/[OII]輝線比を示すなど、普通の星形成銀河と比べ特異な性質を持つことが明らかになってきたが、特にその電離源が何かであるかを追求する必要がある。光電離モデルを用いて、様々な放射場を仮定した場合に予想される輝線比の推定を行っているが、最新の光電離モデルや連星の寄与を考慮した銀河種族合成モデルなどを用いたり、これまでに一般的に用いられてきたモデル以外のものも検討しており、解析に時間が掛かっている。また最近の知見で低金属量銀河におけるX線連星の重要性が示唆されており、追加で解析をする必要などがあり、投稿論文としてまとめ切れていない状況である。
またこれまでの分光フォローアップの結果を考慮して、このような強輝線銀河のより効率的なサンプルの選択手法の開発を目指しており、最新のHSCデータリリースを用いて、最終的なカタログの作成を進めているが、分光フォローアップの解析に時間がかかっているため、こちらの進捗も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で構築している銀河サンプルは極めて強い酸素輝線を示すことが分光フォローアップによって確認された。これらの銀河は比較的低質量かつ低金属量という性質を示す。また[OIII]/[OII]輝線比は一般的な星形成銀河に比べて非常に大きいことが明らかになったが、このような強い輝線や特異な輝線比がどのように実現されるかを考察する必要がある。これまでに行ってきた光電離モデルとの比較を更に進め、X線連星による電離の寄与を考慮したモデルなどとも比較することで、電離源の推定を行う。また、星質量、星形成率、金属量など銀河の基本的な性質と[OIII]/[OII]を始めとする輝線比との相関を見ることで、このような強輝線銀河の起源について考察を進める。我々のサンプルの赤方偏移は0.4から0.8にかけて比較的幅広い範囲に分布しており、赤方偏移進化の議論をする予定である。これらの結果は投稿論文としてまとめて出版する予定である。
これまでの分光フォローアップの結果を考慮して、このような強輝線銀河のより効率的な選択手法の開発を押し進め、最新のHSCデータリリースを用いた最終的なカタログの作成を完了させる。HSCによる広い領域のデータにより、統計的に意味のある銀河サンプルが構築できることが期待され、例えば空間分布などに着目し、これらの銀河種族の形成と環境との関係が明らかになるかもしれない。これらの結果に関しても投稿論文としてまとめる予定である。
本研究の強輝線銀河サンプルはHSCの広い領域にあり、現在開発が進んでいるすばる望遠鏡Prime Focus Spectrograph (PFS)で分光サーベイが予定されている領域に存在する。輝線で明るい銀河のため、比較的短時間の分光観測でも複数の輝線の検出が可能であると考えられるが、より詳細な観測可能性や期待される科学的成果の検討も継続して進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はこれまでに得られた観測結果をひとつにまとめて解析し、その結果の解釈を行ったが、新たにモデル計算をする必要などが生じ、想定以上に時間を要した。追加の詳細な解析を行う必要もあり、最終的な結果を査読論文として発表するために、事業期間の延長が必要となった。成果発表のための旅費および論文出版費として使用する。
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