本研究は、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC)の大規模撮像データを用い、赤方偏移z=0.3-0.9 において非常に大きな輝線等価幅 (>1000A) を持つ銀河の系統的な探査を行うことを目的としたものである。まず、ターゲットの選定を行った。強輝線銀河の予想されるスペクトルを用いて、2色図上で予想される位置を元に、恒星やより高赤方偏移にある銀河の位置なども参考にしながら、効率的にサンプルを構築できる選択基準を設定した。続いて、これらの銀河サンプルをGemini望遠鏡およびすばる望遠鏡を用いて分光観測を行い、合計8天体について非常に強い酸素の輝線([OIII]5007)を検出し、金属量を精度良く測定するために必要な弱い酸素の輝線([OIII]4363)の優位な検出に成功した。これらの強輝線銀河は同様の赤方偏移にある同程度の星質量を持つ普通の星形成銀河に比べ、星形成率が非常に大きく、全体的に低金属量(一部についてはいわゆるextremely metal poor銀河に分類されるほど極めて金属量が低い天体)であることが分かった。また、極めて高い[OIII]/[OII]輝線比を示し、高赤方偏移のライマンアルファ輝線天体と同程度の値であることも分かった。光電離モデルとの比較により、このような輝線比を説明するためには高い電離パラメータが必要である。スペクトルstacking解析により、ヘリウム輝線(HeII4868)が検出されたが、通常の星形成銀河にあるような星の温度では、このHeII輝線の放射に十分な電離光子を作り出すことはできない。X線連星による高エネルギーX線などの寄与がこの由来の候補のひとつとして考えられる。最終年度はこれまでに得られた結果の再確認および手法のアップデートを行い、総合的に考察を進め、最終的な研究結果としてまとめる作業を行った。
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