研究実績の概要 |
本研究では「銀河の中で星形成効率がどのように決まるのか」の解明を目的に次の手順で研究を実施する:(1)銀河系内の領域ごと(渦状腕、渦状腕間空間)に数kpc程度の範囲で分子ガスデータを無バイアスに取得、(2)各領域に含まれる個々の大質量星形成領域に対し星形成の状況の精査、(3)各領域の銀河構造的な特徴と星形成の特徴との比較、またそれら特徴の領域ごとの違いの検証。 これら各手順に対する本年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 (1)2件の共同利用観測(国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡)に提案が採択され、ペルセウス腕ならびに局所スパーに対する分子ガスデータを収集した。これによりこれまで不足していた銀河系外縁部と渦状腕間空間に対するデータセットを新たに得た。 (2)すでに取得済みであった銀河系内縁部の分子ガスデータを詳細に解析することで、新たに2つの大質量星形成領域について、2つの独立した分子雲が衝突したことにより活発な大質量星形成が誘発されたことが明らかになった (Fujita, Nishimura et al. 2018, ApJ, 872, 49; Fujita, Nishimura et al. PASJ, 受理済み)。 (3)銀河系内縁部に位置するサジタリウス腕について、少なくとも 60% 程度の大質量星形成領域で分子雲衝突が大質量星形成を誘発した可能性があること、また、分子雲の衝突方向に1kpcスケールでの大局的な傾向が見られることから銀河運動との関連が示唆されることが分かった (西村他, 日本天文学会2018年秋季年会)。また、銀河系における星形成に直結すると見られる高密度ガスの全ガス量に対する割合は渦状腕で5%程度、渦状腕間空間で 0.4% 程度である事が分かった (Torii, Nishimura et al. PASJ, 受理済み)。
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