研究実績の概要 |
本研究では「銀河の中で星形成効率がどのように決まるのか」の解明を目的に次の手順で研究を実施する:(1)銀河系内の領域ごと(渦状腕、渦状腕間空間)に 数kpc程度の範囲で分子ガスデータを無バイアスに取得、(2)各領域に含まれる個々の大質量星形成領域に対し星形成の状況の精査、(3)各領域の銀河構造的な特徴と星形成の特徴との比較、またそれら特徴の領域ごとの違いの検証。 これら各手順に対する本年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 (1)共同利用観測(国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡)にて取得されたデータの解析を進めた。これにより科学的考察に利用可能なデータセットの準備が概ね整った。 (2)銀河系円盤部の分子ガスデータの詳細な解析を昨年度から継続して行い新たに2つの大質量星形成領域について、分子雲衝突が大質量星形成を誘発した可能性がある事が明らかになった (Fujita, Nishimura et al. 2020, PASJ, 受理済み; Kohno, Nishimura et al. PASJ, 受理済み)。今年度はさらに、系外銀河についても同様の手法を適用し調査を進め2つの領域で、系内銀河同様に分子雲衝突に依る大質量星形成の可能性が明らかになった (Fukui, Nishimura et al. 2019 ApJ, 886, 14; Tokuda, Nishimura et al. 2019 ApJ, 886, 15)。 (3)銀河構造の異なる領域に対する高密度ガスの形成効率の調査を進めた。その結果、局所スパーでは典型的な渦状腕であるサジタリウス腕に比べて、分子ガスの総質量は半分程度なのに対し、高密度ガス存在比の良い指標である[C18O]/[12CO]は倍程度を示しており、効率的に高密度ガスが形成している事が示唆された (西村他, 日本天文学会2019年秋季年会)。
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