原始惑星系円盤やその周囲の磁場強度は、円盤進化や惑星形成過程を決定づける基本的なパラメータである。本研究では原始星形成円盤やその周囲のエンベロープの磁場強度の進化を3次元磁気流体力学(MHD)、化学進化計算を相補的に用いて解明することを目的に研究を推進した。 原始惑星系円盤の磁場の進化を理論的に解明するためには、低電離状態のガスに生じる「非理想MHD効果」の影響を適切に理論に取り込むこと、すなわち、円盤内外におけるガスの電離状態を正しく決定することが必要である。このガスの電離状態を決定する上では、ダストによるイオンや電子などの荷電粒子の吸着や宇宙線電離といった微視的な化学反応を計算する必要がある。 本研究では、この化学反応計算を適切に行なった非理想3DMHDシミュレーションを用いて、円盤の初期進化を解明した。特にダストのサイズ分布という微視的な性質が非理想MHD効果を通して円盤進化にどのような影響を与えるかを解明した。研究を進める上で既存の化学反応計算の計算量が非常に大きくシミュレーション中で計算することが困難であるという課題を発見し、それを解決するために電離化学反応計算を簡便に行う解析的な化学反応ネットワーク計算法を提案した。また、ダスト存在量の変化を3Dシミュレーションで扱うためのダスト-ガス2流体MHDシミュレーションの手法を提案した。これらの研究を通して、円盤磁場の進化におけるダストの重要性を解明した。
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