研究実績の概要 |
超低質量星や褐色矮星の形成機構に関しては太陽程度の質量を持つ星の形成機構に比べて大きく取り遅れている。その理由としては、母体となる非常に高密度で低質量なガス塊の形成要因が理解されていないことが挙げられる。本研究では、ALMA(Atacama Large Millimeter/sub-millimeter Array)を用いることにより、超 低質量星の母体となる高密度分子雲コアを観測し、その形成メカニズムに迫るものである。太陽系近傍にある分子雲コアをALMAを用いて観測することにより、超 低質量で高密度なガス塊がどの程度の割合で埋もれているかを調査する。さらに同望遠鏡を用いて複数分子輝線での高い空間分解能での観測を実施し、高密度コア形成に周囲の環境 (乱流) がどのような役割を果たしたかを明らかにする。 本年度までに、乱流分子雲コア中で形成された、超高密度/低質量の分子雲コアの存在や(Tokuda et al. 2018, ApJ, 826, 8)や、おうし座領域の星なし分子雲コアにおいてMC5Nという天体が最も密度が高く、かつ分子雲コアの質量が典型的なものと比べて1桁近く小さい(0.2-0.4 太陽質量程度)ことを(Tokuda et al. 2019, PASJ, 71, 73)、褐色矮星だけでなく一般的な太陽質量程度の天体において数1000au程度の内部構造が星形成前に発達すること及びその時間スケールを明らかにした(Tokdua et al. 2020, ApJ, 899, 10)。本年度は、南のかんむり座 領域のALMA望遠鏡を用いた観測データの解析にも着手し、おうし座領域で見れたような小質量の分子雲コアが多数存在する兆候を掴むことができた。
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