研究課題/領域番号 |
18K13587
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
三浦 理絵 国立天文台, アルマプロジェクト, 特別客員研究員 (30770698)
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研究期間 (年度) |
2019-02-01 – 2022-03-31
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キーワード | 星形成率 / 近傍銀河 / 大質量星形成 / ミリ波サブミリ波 |
研究実績の概要 |
星形成率は、銀河の進化を理解する上で重要な要素の一つである。星形成率の決定には、若い大質量星からの放射による紫外線/可視光データ、周りのダストによる赤外線放射などのデータを使うのが一般的である。しかしながら、前者はダスト による吸収の影響が大きい、後者は空間分解能が他に比べて低いという欠点があった。一方、電波データから星形成率を推定することもあるが、これらのデータは比較的放射が弱く、検出できる天体が限られるという欠点があった。しかし、ALMA望遠鏡を使えばこれらの欠点を補うような高い感度・空間分解能の電波データが取得可能である。本課題では、ミリ波サブミリ波水素再結合線、および100GHz帯連続波を用いてた新しい星形成率測定方法の有用性を検証する。 2020年度は、 すばる望遠鏡で取得された近赤外JHK撮像データを用いて、M33銀河内南側渦状腕 の星の測光カタログを作成した。今回解析した領域は、当初想定していた以上に星の密度が高く、星のPSFの作成に試行錯誤を要したため、最終的に、アクティブラーニングを利用した機械学習アルゴリズムを使用した。これによって、客観性を保ちつつ自動的に、PSFの作成に最適な星を選択することに成功した。また、フィールドスターと星団の区別に、過去のアーカイブデータを用いた教師付き機械学習モデルを導入したところ、 98% 以上の精度で区別が可能となった。フィールドスターと分離した後の星のうち、大きく減光されている大質量星候補天体として、簡易解析した結果、大質量星候補天体はALMAデータから同定された100GHz帯連続波源と空間的に一致することを確認した。この結果は、昨年解析を行なった北側渦状腕領域の結果を支持する。以上の結果については、ALMA望遠鏡で取得された分子ガス輝線との比較も含めながら、現在論文執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の計画の概要は、(1)すばる望遠鏡で取得された近赤外データの残りの50%の領域について、PSF測光と種族モデルとの比較を行う、(2) 現在取得中のALMAデータについて解析を行い、近赤外線で大質量星候補天体との空間的比較、および星形成率などの量的比較を行う、(3)中遠赤外線データもアーカイブから取得し、それぞれの領域について星形成率を求め、本課題のデータから得られたそれとを比較するであった。 (1)については、測光カタログについてはほぼ完了した。ただ、PSF測光の際、従来の解析方法を変更する必要があり、想定以上に時間を要した。(2) については、パンデミックの影響により望遠鏡の運用が長期間停止したため、新しいデータを取得できていない。 (3) については、他波長についてもデータを取得したが、一部データの質の見極めに時間を要した。以上の状況から、計画はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、すばる望遠鏡で取得された近赤外データ、M33北側南側渦状腕のデータについて、PSF測光と種族モデルとの比較、論文執筆を行う。さらに、ALMA望遠鏡の科学運用が再開されつつあるので、ALMAデータが取得され次第、解析を行い、近赤外線で大質量星候補天体との空間的比較、および星形成率などの量的比較を行う。従来の方法である中遠赤外線データについては、それぞれの領域について星形成率を求め、本課題のデータから得られたそれとを比較する。中遠赤外線データについては、赤外線データが専門の共同研究者と引き続き議論しながら進める。また、観測結果を論文としてまとめていくことを平行して進めていく。国内・国外研究会において、研究成果を発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスによる渡航制限により、研究成果を発表するためや共同研究者との打ち合わせのためのの経費で未使用額が生じた。2021年度は、論文投稿・資料収集のために、研究打ち合わせのための経費や、研究発表のために使用する予定である。
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