研究実績の概要 |
本研究では、「あかり」の遠赤外線全天サーベイデータから選び出された近傍宇宙の爆発的星形成銀河から放出されるPaα輝線を空間的に分解し、その内部で起きている塵に埋もれた星形成活動を空間的に分解して調べることを目指す。今年度は、上記目的を達成するために必要な、すばる望遠鏡の近赤外線観測装置IRCSに搭載する新しい狭帯域フィルターの検討・製作を行った。Paα輝線は静止波長(1.875μm)では地上から観測することができないが、少しだけ赤方偏移した銀河を狙うことで地上から観測することができる。本研究では、大気の透過率を考慮し、中心波長1.984μmの狭帯域フィルターを製作することで、赤方偏移0.05~0.06の銀河のPaα輝線を狙う。フィルターは年度内に納品され、期待どおりの透過率曲線が得られていることを確かめている。次年度にはこのフィルターを観測装置に搭載し、観測時間の獲得を目指す。 さらに今年度は、「あかり」、WISE、SDSS、GALEXなどのアーカイブデータを用いて本研究を進めるうえで不可欠となる銀河のダスト減光に関する基礎的な研究も行った。具体的には、銀河の赤外線と紫外線の光度比の比較によって見積もられる星の光への減光量と、星形成領域から放たれるHα輝線とHβ輝線のフラックス比で見積もられるガス輝線への減光量を比較し、大質量銀河ほど(また星形成率の低い銀河ほど)ガス輝線への減光が強いことを示した(Koyama et al. 2019, PASJ, 71, Issue 1, id.8)。星の光への減光量とガス輝線への減光量のちがいは、銀河内部における星形成領域の分布と関係していると考えられるため、本研究で目指す高解像度のPaα輝線観測によって検証することができると期待している。
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