研究実績の概要 |
惑星はダストが合体成長することで誕生する。本研究の目的はアルマ望遠鏡を用いたミリ波偏光観測を行い、ダストの成長度合いに制限をつけることである。本年度においては、アルマ望遠鏡の3mm長波長偏光観測が行われ、新たに4つの天体における原始惑星系円盤の偏光が明らかとなった。その結果、検出確率は短波長の0.9mmに比べて低く、本研究における仮説である、ダストサイズが100ミクロン程度であるという解釈を裏付けることとなった(Harrison, …, Kataoka, et al. 2019)。これは従来の観測から言われていたミリメートルサイズダストの解釈と矛盾しており、惑星形成の第一段階であるダスト成長に大きな制約をもたらす。また、理論的にはダストは付着成長の過程で高空隙率を持つと考えられているが、高空隙率ダストでは観測を説明できないこともわかった(Tazaki,... Kataoka, et al. 2019)。これも理論的に重要な結論である。
その一方で、偏光の起因となっているダスト散乱の理論的考慮が、他の観測結果の解釈にも大きく影響することがわかってきた。ミリ波において従来無視されてきた偏光は、連続波も減光させることがわかった(Zhu, …, Kataoka, et al. 2019)。この結果を全天で最も明るい天体の一つであるTWHya に応用した結果、中心付近においてダスト質量が従来の考え方よりも20倍以上重いことがわかった(Ueda, Kataoka, et al. 2020)。すなわち、これまでの原始惑星系円盤の観測解釈は惑星形成物質の質量を過小評価していた可能性がある。更に派生的な研究として、原始惑星系円盤のダストの巻き上がり構造への制限も行った(Ohashi and Kataoka 2019)。
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