研究課題
令和元年度では、追加観測によってデータが増えたことにともなう最終的なCOMINGデータを用いて、改めて再解析を行った。特に、孤立銀河、銀河群、銀河団に属する銀河内の分子ガスと恒星の集中度の動径変化を導出し、銀河環境が銀河内部の物質分布へ及ぼす影響を中心に研究を推進した。まず、最終的に得られた銀河の一酸化炭素撮像サンプル147銀河から、銀河間の直接的な重力相互作用の影響を避けるため、相互作用銀河を除外した。残った銀河を孤立銀河、銀河群、銀河団のそれぞれの密度環境へ分類した。ここでは先行研究に基づいて、High Density Contrast分類とLow Density Contrast分類の2通りを採用した。High Density Contrastでは孤立銀河62、銀河群に属する銀河41、銀河団に属する銀河6となり、Low Density Contrastでは孤立銀河37、銀河群51、銀河団21となった。このデータセットを用いて、両分類ともに、銀河内部での分子ガス、恒星が銀河中心に対してどれくらい集中しているか、をそれぞれの環境、および半径を変えて調べた。分子ガス、恒星、またどの半径でも銀河環境間で中心集中度に有意な差が無いという結果が得られた。平成30年度成果で報告したように、ガスや星の質量の間には環境による差がみられないことから、これは分子ガスや恒星分布に対する銀河の置かれた環境からの影響は銀河内部の構造を乱すほど大きくはないことを意味すると考えられる。
3: やや遅れている
追加観測を実施したことにより、最終的なCOMINGのサンプル数が変わり、そのデータ解析、論文出版と、これまでに行った解析の再実施が必要になったため、当初予定に対して若干の遅れが出ている。本研究課題そのものについての本質的な問題ではないため、引き続き着実に取り組んでいきたい。
まず、令和元年度に得られた結果「孤立銀河と銀河群の間には、分子ガス、恒星の質量に差がないこと、銀河中心に対する集中度にも、銀河中心からの距離によらず顕著な差が見られないこと」を論文にまとめ出版を行う。そののち、各環境ごとの原子ガス、分子ガス、恒星の非対称性の定量化を行い、環境による銀河外縁部への影響の検証を行う。更に、分子ガスを材料として行われる星形成の活動性を、星形成率、星形成効率として定量化し、分子ガスの質量や恒星に対する広がりといったパラメータとの比較を実施、論文化する。また、令和元年度では銀河相互作用によるものか、銀河群、銀河団による広域での共通した性質によるものかを切り分けるため、相互作用銀河における同様の比較も並行して行っていく。これらの解析は、COMINGの撮像データである優位性を生かし、銀河全体での議論と銀河内の渦状腕などの構造を分解できるピクセルスケールでの議論を組み合わせて実施する。
台風19号の影響により参加予定していた海外研究会に参加できなかったことから、支出が減少した。一方、令和二年度より所属機関が変更になったため、残金を本研究推進への環境整備に使用する。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 71 ページ: S14-1, S14-42
10.1093/pasj/psz115
https://www.nro.nao.ac.jp/news/2020/0109-pasj_si.html#nmnews