研究課題/領域番号 |
18K13595
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大橋 聡史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (50808730)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子雲コア / 星形成 / 惑星形成 / 偏光観測 / 原始惑星系円盤 |
研究実績の概要 |
本研究では、星形成を開始する分子雲コアの角運動量から円盤の形成・進化を予想し、実際の円盤と比較することで円盤の形成から進化モデルを構築する。 初年度はALMAを用いて、星形成直前の分子雲コアを高分解能で観測し、いくつかの塊をダスト連続波観測によって同定した。分子雲コアはフィラメント構造に内在し、南北に伸びた構造をしている。各塊はこの南北方向に沿って分布し、その間隔がジーンズ長と一致することから、ジーンズ不安定性による連星系の形成を示唆する。さらに、N2H+分子とCH3OH分子輝線の観測から、分子の空間分と違いや速度構造を調べることができた。N2H+はダスト連続波と似た分布をしており、高密度領域を示している。一方でCH3OHは分子雲コアを囲むように分布し、中心方向では強度が弱くなっている、シェル構造をしていることがわかった。これはCH3OHがcosmic rayなどによってダストからガスへと放出していることを示唆する。また、分子輝線の観測から、それぞれの塊で速度構造があることが明らかになった。
また進化した円盤(HD 142527)に対して、ALMA偏光観測を行い、偏光起源を探ることでダストが成長している様子を調べた。その結果、円盤の北側でダストが成長し、散乱による偏光が生成され、南側では小さなダストが分布し、磁場に整列したダストの偏光が生成されていることを示した。この研究によって、ダストが圧力勾配によって局所的に集まりダスト成長が起こっていることと、円盤の磁場がトロイダルであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
星形成直前の分子雲コアを同定し、ALMAによる高分解能観測を行うことができた。これによって、分子雲コア内で既に分裂が起きて、連星系を成す様子が明らかになった。今後、これらのデータから速度構造を解析し、各塊の回転運動を見積もることで、円盤を形成する初期の角運動量を見積もることができる。 また、原始惑星系円盤の偏光観測でも、その偏光メカニズムの理解が進んだ。ダストサイズによって偏光メカニズムか変化するので、これを利用してダストサイズが小さな領域で磁場の様子を探れたり、ダストが成長している領域では散乱偏光をとられることができればダストサイズを詳しく見積もることができる。
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今後の研究の推進方策 |
ALMAによる高空間分解能(~400 AU)かつ速度分解能(~ 0.05 km/s)によって、星形成直前の分子雲コアを観測し、回転成分を検出する。これによって初期の角運動量を半径ごとに見積もることができ、円盤形成を調べる。 また、原始惑星系円盤に対してもALMA偏光観測を行うことでダストサイズや磁場の様子を探る。さらに輻射輸送計算によるモデルと比較することで円盤内でのダストサイズの違いなども明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に参加した研究会の1つは招待講演のため旅費援助を得ることができ、そのため旅費の一部を削減することができた。 次年度は、解析データ用のストレージの購入と海外と国内の研究会参加し、さらに国立天文台などの研究機関で議論を行う。
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