研究実績の概要 |
広視野 CMOS モザイクカメラ: トモエゴゼンの開発・運用, およびトモエゴゼンによって 2018 年に取得した流星観測データの解析を実施した. トモエゴゼンは全部で 4 台のカメラモジュールから構成される観測装置である. 2019 年 4 月に 4 台のカメラモジュールが揃い, 試験観測の期間を経て 2019 年 10 月に本格運用を開始した. これまで安定した運用を続けている. また, 対物グリズムを使用して流星の色情報を取得するための試験データの取得を実施した. また京都大学 MU レーダとトモエゴゼンによる同時観測 (2018 年 4 月) によって取得したデータを解析, 微光流星の可視光での明るさとレーダ反射断面積の経験的な関係を導出した. また, 導出した関係式を用いて MU レーダで数年に渡って取得してきた散在流星の光度分布・流星体の質量分布を求め, 木曽観測所 105-cm シュミット望遠鏡とトモエゴゼンの組み合わせによって, 最先端のレーダ観測に匹敵する暗さの流星まで検出できることを明確に示した. 2019 年 5 月に開催された日本地球惑星科学連合 2019 年大会にてポスター発表を, 2019 年 6 月の国際研究会 "Meteoroids 2019" にて口頭発表で, 2019 年 10 月の日本惑星科学会 2019 年秋期講演会にて口頭発表で, 2020 年 3 月の日本天文学会にて発表資料として結果を報告した. この成果をまとめた論文を Planetary and Space Science 誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カメラおよび解析環境の開発は順調に進んでいる. 2018 年度の研究から, 当初計画していた分光素子をそのまま使用した場合, 流星の色を正しく求められない可能性が示唆されていた. そのため 2019 年度は分光情報を正しく評価するための試験データの取得を実施した. 現在は試験データの解析を進めている. 分光システムの購入については 2019 年度は見送った. トモエゴゼンの開発, および運用については計画通りに進行しているが, LIGO-Virgo collaboration による重力波観測 (O3) による可視光対応天体のフォローアップ観測に費やす時間が当初の予想以上に多かったこと, また流星の観測に重要な暗夜に他の大規模観測プログラムが予定されていたことから十分な観測時間を確保することができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
観測したデータから流星を抽出するための解析プロセスの効率化を目指す. 2019 年度とは異なり, 2020 年度には競合するような大規模な観測プログラムは予定されていない. まとまった観測時間を確保して流星の色情報を取得するために必要なデータを蓄積する. 計画が全体的に後ろ倒しになったため, 2020 年度はデータの取得とデータ解析環境の整備によってパイロット的な結果を出すことを目標とする. トモエゴゼンによる観測は本研究計画とは独立に継続する予定である. 本研究によって微光流星を光学的にモニタリング可能な環境を世界で初めて整備することができる.
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