最終年度においても、交付申請書に記載したとおり、「多様な地球型惑星が持つ衛星系の起源・進化の統一的理解に向けた理論研究」を目指した活動を行った。具体的には、(1) 地球の月から揮発性物質を枯渇させる新たな物理化学プロセスの発見、(2) 高解像度衝突数値計算を用いて、小天体衝突による天体表層の力学進化(天体表層が削られる量と衝突天体物質の集積量)の定式化、(3) 準惑星周りの衛星の軌道進化に関する理論研究、(4) 衛星や小惑星Ryuguなどの小天体の高速自転による形状進化に関する理論研究、(5) 衛星や惑星の材料物質となる微惑星の形成過程に関する理論研究、(6) JAXA火星衛星探査計画(MMX計画)に関連した火星衛星フォボスの観測計画およびフォボスの表面物質進化に関する研究活動、を行った。最終年度におけるこのような研究活動は、7本の国際査読論文としてまとめられ、出版されている。
研究期間全体を通じて、当初の計画以上に、研究成果をあげられたと感じている。交付申請書に記載した内容をさらに拡大し、地球型惑星が持つ衛星系だけでなく、より多様な衛星や小天体の起源と進化の統一的な理解に向けた理論研究を展開することができた。研究期間全体を通じて、得られた結果を国際査読論文に素早くまとめ上げた。研究期間の後半はコロナ禍であり、当初計画していた海外研究渡航は叶わなかった。しかし、研究計画を柔軟に変更し、テレビ会議システムを用いて、国際共同研究を滞り無く進めることができた。旅費としての計上分を汎用性のある計算機の購入費に変更することで、研究データの取得が加速し、結果的に研究計画を効率よく進めることとなった。
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