研究課題/領域番号 |
18K13601
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
藤井 友香 国立天文台, 科学研究部, 准教授 (20713944)
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研究期間 (年度) |
2019-02-01 – 2022-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 地球型惑星 / 惑星大気 / アストロバイオロジー |
研究実績の概要 |
系外惑星の将来観測の重要課題の一つは、特に温暖な地球型惑星について、その大気の有無や組成を探ること、そして生命環境の有無を探ることである。本課題では、比較的観測がしやすいと考えられる低質量星周りの温暖な地球型惑星について、大気構造のモデリングと特徴付けの方法の検討を行っている。 本年度は、中間赤外領域の中分散・高分散分光によって惑星大気分子のスペクトルの特徴を検出する方法について、前年度に引き続き検討を深めた。具体的には、波長分解能依存性や温度構造・分子の存在量依存性等を調べるとともに、いくつかの装置設計における観測可能性や恒星光の変動の影響を評価した。これらの結果をまとめ、論文化した。 また、中間赤外線領域において低-中分散分光が可能なJames Webb Space Telescopeによる温暖な固体惑星の特徴付けについても単純化された大気モデルを用いて検討し、地球近傍の非トランジット惑星系については現実的な観測時間で大気量に制限ができる可能性を示した。ただし、実際に検出可能かどうかは、最終的に装置の系統誤差に依存する。 また、それらの温暖な地球型惑星に大気があった場合に、生命圏由来の大気分子がどのような条件下で検出できるのか、大気の鉛直1次元光化学計算を用いて調べている。地球と同様の生物圏を仮定した場合、純一次生産量が同じでも、低質量星周りの地球型惑星では酸素・メタンともに大気中に蓄積しやすい傾向があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、前年度に始めた中間赤外領域における高分散スペクトルの検出方法について、装置ノイズの不定性や恒星光の変動などの影響も考慮し、検討を深めた。また、さまざまな大気構造の模擬スペクトルを作成し、分子の存在度への依存性を調べ、大気圧が地球程度(1bar)である場合には1-1000ppm程度の比較的存在度が小さい分子により感度があることや、温度逆転層がある場合には軌道傾斜角が大幅に決定しやすくなることが分かった。また、波長分解能依存性等についても調べ、将来計画の開発者らと情報交換を行なった。これらの結果を論文化した。 一方、温暖な地球型惑星の大気中の大気化学計算による生命関連分子の検出可能性の検討についても進めている。本年度は、光化学反応計算において暗に仮定されている境界条件の再検討を行うとともに、生物圏が行う実行的な化学反応のモデルを組み込み、モデルを改良した。また、化学反応の速度や経路の分析のためのコードを作成し、大気中での反応を整理できるようにした。その上で、生命関連分子の大気中での安定性の、大気圧や入射紫外線スペクトルへの依存性を調べている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の光化学反応計算の結果には、一部理解できない振る舞いがみられるため、これらのふるまいの原因を精査し、計算の妥当性をさらに高める。その上で、惑星大気圧や組成などへの依存性や整理し、注目すべき分光特性をまとめ、将来の観測において生命のサインを探す上での指針として役立てられるようにする。 また、これまでの計算は主に鉛直方向一次元の大気モデルとなっているが、実際の低質量星周りの惑星は、潮汐固定のため、水蒸気の分布や紫外線の入射パターンが太陽型星周りの同等の惑星と比べて異なることが考えられる。3次元計算の結果なども用いながらそれらの効果を考慮に入れ、より現実的な大気モデルを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの蔓延が続き、一切の出張ができなくなったことにより、旅費として想定していた額は未使用に終わった。 次年度、状況が改善すれば出張を伴う議論等を始めるが、コロナの状況が改善しない場合は、本研究課題を遂行するための環境整備、新たなディスプレイ等周辺機器の購入や、ソフトウェアライセンスの購入などに使用したい。
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