研究実績の概要 |
惑星形成理論によると,惑星サイズ(>~1,000 km)の天体はまず円盤ガス中で微惑星あるいはペブルによって形成される.この原始惑星の集積段階において,揮発性元素は,集積物質に含まれる物質(含水鉱物や有機物)として,また原始惑星周りに存在する円盤ガスの捕獲により供給されうる.原始惑星が獲得した揮発性元素はその後の巨大衝突段階を経ても残るため,すべての地球型惑星の揮発性元素量や組成を考える上で理解すべき過程である. 原始惑星に供給された揮発性元素は地表あるいは大気中に供給される.一方で,マグマへのガスの溶け込み・脱ガスやマグマとの化学反応という過程により,大気-マントル間での分配も生じうる.この分配過程を考える上で,まず地表岩石の溶融条件を明らかにする必要がある.本研究ではまずそのための大気構造計算モデルの構築に着手した. 気体のギブス自由生成エネルギーはJANAFテーブルから取得し,化学平衡組成を計算するモジュールを開発した.まず,円盤ガスの主成分である水素と強い吸収係数をもつ水蒸気からなる大気について非灰色放射対流平衡計算を行う大気モデルを開発した.放射フラックスの計算には相関k 分布法を用い,吸収係数はHITEMP2010, MT_CKD, HITRAN2016のデータベースを使用した. 現在の地球型惑星の大気とは異なり,より広範囲に広がった大気構造を計算する必要がある.そこで,大気の放射フラックス計算では平衡平板近似を用い,一方で放射対流構造計算では高さごとの表面積の違いを考慮し,各大気層での光度をもとに放射対流平衡構造を行うようにコードの改良を行った.
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