研究課題/領域番号 |
18K13603
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
濱野 景子 (飯塚景子) 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (40646171)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マグマオーシャン / 放射対流平衡 / 大気放射 |
研究実績の概要 |
惑星形成理論によると,惑星サイズ(>~1,000 km)の天体はまず円盤ガス中で微惑星あるいはペブルによって形成される.この原始惑星の集積段階において,揮発性元素は,集積物質に含まれる物質(含水鉱物や有機物)として,また原始惑星周りに存在する円盤ガスの捕獲により供給されうる.原始惑星が獲得した揮発性元素はその後の巨大衝突段階を経ても残るため,地球型惑星の揮発性元素の起源を論じる上で理解すべき過程である. 原始惑星に供給された揮発性元素は地表あるいは大気中に供給される.一方で,もし地表が集積熱によって溶融する場合には,マグマへの溶解・脱ガス,マグマとの化学反応により,大気中の組成と量は変質しうる.そのためまず地表岩石の溶融条件を明らかにする必要がある.本年度は前年度に引き続き大気構造計算モデルの構築を引き続き行った. 前年度では,化学平衡組成を計算するモジュール,円盤ガスの主成分である水素と強い吸収係数をもつ水蒸気からなる大気について非灰色放射フラックス計算を大気の曲率を近似的に考慮し行うモジュールを開発した.今年度はこれらのモジュールを用いて,地表温度と酸素フガシティーを変えた場合の大気組成・放射対流温度構造を計算するモジュールの開発・改良を行った.その結果,酸素フガシティーが高く,水蒸気に富む大気では主に対流層が形成されるのに対し,大気中の水素量が増加するとともに複数の対流層・放射層が形成されうることがわかった.このような多様な大気構造が取り扱えるようモジュールの改良を追加で行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二層(対流層+放射層),もしくは全体流といった単純な層構造を想定しモジュールを開発していが,得られた放射フラックス分布から,大気組成・地表温度の変化に伴ってより多様な大気層構造が形成されることがわかった.これらを取り扱うための追加のモジュールの修正に時間を要した.また,複数の放射層・対流層が生じる場合,これまでの簡単な構造に比べ,平衡構造に達するまでにかかる計算時間が飛躍的に伸び,計算時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の予定のうち,並行平板大気での大気構造計算は時間は予定外の時間を要したものの行えるようになった.一方,曲率を考慮した構造決定,また大気上端で円盤ガスと接続する大気構造の推定は,次年度に繰り下げ継続して行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加費が,主催者負担あるいは共著者負担となったため,出張費が減額となった.これらは繰越し,次年度の成果発表費に当てる.また,本年度末に計算機を購入予定であったが,新型コロナの影響で納期が確定せず,購入を次年度に見送った.
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