惑星は原始惑星系円盤の中で誕生すると考えられており、その中でも木星のような巨大ガス惑星が生まれる際には、惑星の周りに回転しながら円盤状に集積するガスによって周惑星円盤が形成される。周惑星円盤は衛星形成の場であると考えられており、周惑星円盤の構造はその中で形成される衛星を特徴付ける重要な要素である。温度・密度分布は、衛星の組成のみならず軌道にも影響を与える。周惑星円盤の中で形成した衛星の多くは、その軌道が中心のガス惑星に向かって移動していくため、惑星に落下してしまうことが知られている。この衛星の惑星への落下を防ぐために、これまでに様々なアイデアが提唱されてきた。 本研究では、その中でも惑星磁場による効果について定量的に検討した。惑星の磁場強度や円盤のガス降着率及び電離度によっては、ガスが惑星の赤道面からではなく惑星の磁気圏に沿ってガス降着することが知られている。これを磁気圏降着と呼ぶ。今年度は、磁気圏降着に関する最新のシミュレーション研究の成果を踏まえて、モデルの高精度化を行った。 我々は、形成当初の木星および土星の内部構造を計算し、それぞれの磁場強度を求めた。そして、土星の周りの円盤では磁気圏降着が起こらないことを明らかにした。一方、木星の周りでは、一定の間、磁気圏降着が可能な時期があることが分かった。我々は、磁気圏降着により円盤の内縁と木星の赤道面との間に距離がある時期には、木星に向かって移動してきた衛星が円盤の内縁で停止し、さらに後続の衛星が共鳴軌道に捕獲されることによってガリレオ衛星のような衛星系が形成可能であるということを示した。本研究では、長年の謎であった、木星と土星の衛星系の構造の違いを説明するシナリオを構築することに成功した。
|