研究実績の概要 |
初期太陽系円盤の高温のガスから凝縮したダストの形成年代を系統的に測定し,その分布を明らかにすることが研究の目的である。始原的なコンドライト隕石に含まれる細粒CAI(Ca-Al-rich inclusion)は,約1700-1400 Kの太陽組成ガスから凝縮した鉱物の集合体であるといわれている。本研究では,始原的なコンドライト隕石である,CV3 reducedコンドライト中の細粒CAIのAl-Mg形成年代を,二次イオン質量分析法による局所同位体分析で系統的に測定する。本年度は以下の研究成果が得られた。 1. 走査電子顕微鏡を用いて,CV3 reducedコンドライト隕石から,Al-Mg形成年代を測定可能な細粒CAIを8つ見繕った。 2. 二次イオン質量分析計の光学系の調整を見直すことで,Al-Mg形成年代測定時における二次イオンの透過効率を,これまで(Kawasaki et al., 2018, GCA)の約2倍に向上させた。これにより細粒CAI中の微小鉱物結晶の年代測定が可能となった。 3. 見繕った8つの細粒CAIのうち,5つの細粒CAIのAl-Mg形成年代の測定を完了した。測定は北海道大学のマルチコレクター型質量分析計(Cameca ims-1280HR)を用いて行った。それぞれの細粒CAIについて得られたAl-Mg鉱物アイソクロンの傾きから,初生26Al/27Al比が得られ,(5.19 ± 0.17) × 10^-5から (3.35 ± 0.21) × 10^-5の広がりを示すことがわかった。この初生26Al/27Al比の広がりは,44 ± 7万年の形成年代幅に相当する。本研究により得られた細粒CAIの初生26Al/27Al比の広がりは,初期太陽系円盤の高温のガスからのダストの高温凝縮プロセスが,太陽系形成最初期の少なくとも約40万年間続いていたことを示す。
|