研究課題
本研究では、大気の短周期~中・長周期変動にわたる幅広い周期帯の大気変動に対して日周期変動が果たす役割とその物理プロセスを明らかにすることを目的として研究を始めた。まずは数値シミュレーションの結果の解析により、短周期変動に与える影響を調べた。ところが昨年度研究を進める過程で、そもそも大気の短周期変動の成因について学術的にも良く分かっていない、ということが判明した。そこで本年度は、(日周期の影響という観点からの研究は一先ず置いておき)大気の短周期変動について詳しく調べることにした。最新の高時間分解能グローバル大気データ(ERA-5大気再解析)を新たに使用して時空間スペクトル解析を行った。その結果、『グローバル大気自由振動』のシグナルが非常に強く表れており、実際その周波数や全球構造は理論的に予測されてきたものと驚くほど良く一致することが明らかになった。自由振動が比較的長周期の変動に見いだされることはこれまでも知られていたが、短周期成分にも大きく寄与していることを示したのは本研究が世界初である。これらの成果は論文にまとめて現在投稿中である(Sakazaki and Hamilton, submitted to Journal of Atmospheric Sciences)。来年度も、今回明らかになった短周期の自由振動について引き続き調査を進める予定である。またこれらの研究とは並列的に、観測が非常に難しい上空大気の日周期を明らかにすべくUAVを用いた観測を試行した。のべ2日にわたる観測により大気境界層の熱的構造の時間発展を明瞭にとらえることに成功した。さらに、日周期研究という観点から新しい中層大気衛星観測計画の立案にも関わった。
1: 当初の計画以上に進展している
上記に述べた通り、研究を進める中で「短周期のグローバル大気自由振動」というこれまで観測例のない現象を発見することができた。また、日周期を観測する新しい観測手法(UAVを用いた観測)も確立させつつある。
異なる全球大気データセットや気候モデルデータを併用しつつ、今回発見した短周期の大気自由振動の時空間変動特性やそれらが日々の気象に与える影響について重点的に調べていきたい。また自由振動の成因として(当初の)研究対象である「日変動によるエネルギー注入」が役割を果たしている可能性があり、この観点も交えてエネルギー収支解析等を行うことで励起メカニズムについても明らかにしたい。またUAVを用いた観測では、熱的構造だけでなく、循環場(風)の測定も実現させたいと考えている。
論文1編の投稿料を計上していたが、まだ受理・掲載に至っていないため。またCOVID-19の影響で2-3月の学会出張が立て続けにキャンセルとなったため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Atmospheric Measurement Techniques
巻: 13 ページ: 219-237
https://doi.org/10.5194/amt-13-219-2020
IGARSS 2019 - 2019 IEEE International Geoscience and Remote Sensing Symposium
巻: なし ページ: 8788-8791
10.1109/IGARSS.2019.8898423
https://researchmap.jp/takatoshi_sakazaki