研究実績の概要 |
本研究では、大気の短周期~中・長周期変動にわたる幅広い周期帯の大気変動に対して日周期変動が果たす役割とその物理プロセスを明らかにすることを目的として研究を始めた。まずは数値シミュレーションの結果の解析により、短周期変動に与える影響を調べた。ところが研究を進める過程で、そもそも大気の短周期変動の実態について学術的にも良く分かっていない、ということが判明しこの点について詳しく調べることにした。 最新の高時間分解能グローバル大気データ(ERA-5大気再解析)の解析により、短周期成分に『グローバル大気自由振動』のシグナルが非常に強く表れていることが分かった。自由振動研究はおよそ二世紀にわたる長い歴史があり、その存在は理論的に予測されてきた一方で、現実大気中の共鳴振動の検出は、これまでごく一部の低周波なものに限られていた。本研究は、大気中の共鳴振動を広い周波数領域にわたって多数検出することに初めて成功したものである。本研究成果は国際ジャーナル論文として公開し(Sakazaki and Hamilton, 2020, Journal of the Atmospheric Sciences)、海外の複数のメディアに取り上げられた。 さらにこれら自由振動は、微弱ながらも熱帯のグローバルスケールの地上降水変動を励起していることも明らかにした。これまで自由振動はむしろ降水変動によって引き起こされていると考えられてきたが、本成果はその理解に疑問符を投げかけるものでもある。この成果も国際ジャーナル論文(Sakazaki, 2021, Journal of the Atmospheric Sciences)として公表した。
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