研究課題
本研究の目的は雷放電路三次元可視化システムFALMAを用いて大型風力発電施設の最大被害要因である上向き雷の発生機構を解明し、被害を減少させることである。これを実現するために、2018~2020三年間の冬季に北陸地方に12~14か所の観測サイトから構成されたFALMAシステムを設置して、鉄塔や風車からの上向き雷を中心に冬季雷の観測を行った。また、予備実験として岐阜県及び周辺地域で12か所の観測サイトから構成されたFALMAも設置して、夏季雷の観測も行った。両方の観測とも高品質なデータを取れて、多くの成果をあげた。夏季雷データの解析で主に以下の成果が出ており、既に学術誌に発表された:(1)正極性落雷の初期放電のパルス列の放電極性を初めて特定した;(2)高高度(>12㎞)から開始し、下に進展する雲放電を初めて観測した;(3)観測が困難と言われる正極性リーダを数百例記録し、進展速度の統計解析ができた。冬季上向き雷に関連する成果は主に以下の三つである:(1)正極性上向き雷の開始過程である上向き負リーダの速度、電界変化の特徴及び誘発機構等を解明した。上向き負リーダが放射する特徴的な電界変化波形を利用して遠距離で正極性上向き雷を監視できることを示した。(2)正極性上向き雷の主な原因である強い負極性落雷について、普通の落雷と違い非常に強くて放電路が非常に短い特殊的な落雷が冬季に発生することを初めて明らかにした。Compact Return Strokeと名付けて、発生場所、放電路の長さ、電流値、電界変化等の特徴を解析した。(3)負極性上向き雷の主な原因である正極性落雷について、正極性多重雷の特性と発生メカニズムを解明した。また、本研究を通じて、FALMAの性能を向上した。FALMAは世界最高性能のLF帯雷三次元可視化システムとして認識されつつある。
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