研究課題
平成30年度は、土壌中の空気に含まれる放射性核種ラドンの濃度(土中ラドン濃度)およびその地表からの放出量(ラドン・フラックス)を測定するシステムを構築した。土中ラドン濃度測定システムの構築では、ラドン測定の妨害因子となる同位体トロンの影響を検討した。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研機構)に設置されたトロン標準場(トロン濃度が既知の環境)においてラドン測定器を曝露した結果、トロン濃度に対して30%程度の影響が認められた。影響を低減させる対策を施して0.3%まで低減させることができ、それによる応答時間の遅れは1時間程度と推定された。また、ラドン測定器を量研機構のラドン標準場において曝露し、トロン低減対策後においても対策前と同等のラドン濃度を測定できることを確認した。さらに、ラドン測定に対する湿度依存性に関しても検討し、湿度依存性が無視できるほど小さいことを確認した。以上より、ラドン測定器が土中ラドン測定に適していると判断し、本測定器を土中に埋設して土中ラドン濃度のモニタリングを開始した。ラドン・フラックスの測定では、地表に容器をかぶせて放出されるラドンを収集し、それをポンプによりラドン測定器へ導入した後に外気へ排気するワン・スルー・システムを検討した。本システムでは、ポンプの強制吸引による土中空気流の誘因およびトロンの影響が課題であった。排気側にポンプを設置する方式と給気および排気の両方にポンプを設置する方式を検討した結果、後者の方式が土中空気流を誘起する効果が小さく、システムとして適当であると判断された。また、ラドン・フラックス推定値に対するポンプ流量の影響を検討した。その結果、0.20 L/min以上においてトロンの影響と考えられるラドン・フラックス推定値の増加が認められ、ポンプ流量は0.15 L/min以下が妥当であると判断された。
2: おおむね順調に進展している
ラドン測定器が土中ラドン濃度測定に適していることを明らかにし、土中ラドン濃度のモニタリングを開始することができた。さらに、ラドン・フラックスの測定に適したシステム条件を決定することができた。これらのことから、本研究は概ね順調に進んでいると判断した。
平成31(令和元)年度は、土中ラドン濃度のモニタリングを継続するとともに、ラドン・フラックス測定システムおよび大気ラドン測定器を観測サイトに設置する。さらに、環境パラメータ(土壌水分や土壌温度など)モニタリング装置を設置する。観測により得られたデータに基づき、土中ラドン、ラドン・フラックスおよび大気ラドンの関係性やラドンと環境パラメータの関係性について検討する予定である。
残額が1,279円と少額であったため次年度へ繰り越すこととした。繰越金は、次年度において消耗品等の購入や文献複写に使用する予定である。
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