研究課題/領域番号 |
18K13625
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永井 裕人 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 講師(任期付) (50771474)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | SAR / 氷河湖 / GIS |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究のコア技術となる氷河湖の自動抽出手法について、SAR画像(「だいち2号/PALSAR-2」)から自動的に湖のポリゴンを作成するアルゴリズムを複数検討し、処理結果を比較した。その結果、既存ソフトウェアに実装されている各種セグメンテーションツールを利用した場合には、対象エリアの地形や氷河湖の空間分布によって、最適なパラメータの組み合わせが様々であり、普遍的な手法を得ることが難しいという示唆が得られた。セグメンテーションは画素値の均一性とそのオブジェクト形状を考慮したものであり、複数の地表オブジェクトを分類するときに有効である。しかし本研究での利用意図は、氷河湖(水面)をそれ以外の地表面から区別するだけであり、無意味に複雑な処理を選択するより、より単純な方法を検討した方が良いと思われる。 その後の検討の結果、平滑化フィルタによってSAR特有のスペックルノイズを除去した上で、単純な画素値の二値化によって反射強度の低い部分を抽出すると、最も堅牢性の高い氷河湖抽出が可能であることが見出された。平滑化フィルタは氷河湖上の細かなテクスチャも除去できるので、結氷部分やさざ波に起因する誤抽出を減らす効果もある。 さらに欧州衛星Sentinel-1で同様の処理を実施できることも確認された。これにより複数衛星の利用によってさらに高頻度な氷河湖変動監視が可能になると期待でき、これを考慮した上で、今後のツール構築を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画に記載した「氷河湖の自動抽出手法の確立」と「海外衛星への適応評価」を実施した。様々な画像処理手法を検討した結果、複数のパラメータが必要とされる複雑なセグメンテーション法よりも、単純な二値化を基本とする手法が良いことがわかり、どのような地形条件にも対応できる堅牢性の高い処理フローが適しているという知見が得られた。また海外衛星でも同様の手法が可能となった影響は大きく、今後の防災ソリューションを提案する上でも重要な点である。総じて本研究は概ね順調に進展しており、今後も研究計画に沿って解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現状の課題としてあるのは、一部の氷河湖について、隣接する暗い部分を含めて抽出してしまうことである。これに関しては解決策が複数ある。まず、地形データや既存氷河データベースを利用して、氷河湖が拡大し得ない部分に前もってマスクをかけてしまう方法である。また、湖岸線が鋭角になったりというトポロジ上の除外条件を設定することによっても、湖として不自然な輪郭を防ぐことができると考えられる。当初は商用SAR衛星のTerraSAR-Xも積極的な利用を検討していたが、高額かつ観測回数が少ないことにより、これを主たる入力データにはしないこととした。ただし前述のSentinel-1で十分な観測頻度は確保されているため、本研究への影響は殆ど無いと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
費用対効果が低いことが明らかになった海外商用衛星の使用計画を見直し、一部予定していたデータの購入を見送った。同時に予定よりも上位機種のワークステーションを調達し、より高速なSAR画像処理が可能な解析環境を構築した。これらの結果、使用額に若干の残額が生じた。
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