研究課題
本年度は,(1) カルサイトーアパタイト反応実験による反応帯形成実験,(2) 東南極セール・ロンダーネ山地の反応帯解析を行い,その成果を投稿論文として出版した.(1)では,カルサイトとリン酸アンモニウム溶液を150―250℃で反応させることで拡散律速型の反応帯の形成に成功した.反応フロントの位置は拡散律速型の未反応核モデルで定量的に説明でき,その有効拡散係数は空隙率の1―2乗則に従うことを明らかにした.また,反応中の実効拡散係数は,反応物・生成物の静的な拡散係数よりも1桁近く高く,反応による空隙生成で,実効的な拡散係数が有意に大きくなることが示された.これらの実験結果より,低空隙率であり,物質移動が空隙流体中の拡散に支配される地殻条件下でも,有効拡散係数の空隙率依存性を考慮することで,拡散律速型の反応輸送モデルが適用できることが示された.(2)では,複数の天然の岩石―流体反応帯へ反応輸送モデル・熱力学解析を適用し,地殻内流体圧分布と浸透率を制約した.角閃岩相からグラニュライト相の反応帯に記録された流体圧勾配はいずれも約100 MPa / 10 cmと非常に高い.一方,その流体圧継続時間は数時間から1年程度と多岐に渡り,破壊現象毎に流体活動時間が桁で異なることが示された.反応帯の浸透率は,10^-20―10^-22 [m2]と低く,亀裂のない成熟した地殻では地殻浸透率は非常に低いこと,亀裂生成により一時的に5桁以上大きくなることが明らかになった.これらの値より,従来研究で示されていた10^-18 [m2]という地殻浸透率は数百万年スケールの時間平均であり,数時間―年スケールでは,10^-20―10^-22 [m2]と低く,亀裂生成の繰り返しにより長期的な浸透率が上昇すると考えられる.これらの成果は,Mindaleva et al. (2020) Lithosとして出版された.
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 4件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件)
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