地震現象の解明は、自然科学として重要であるだけでなく、社会からの期待も大きい。特に、地震現象の多様性や複雑性については、広く認識されている一方で、その物理的原因については未だ分かっていないことが多い。例えば、地震には微小地震から巨大地震まで存在するが、地震の大きさを決定づける要因はよく分かっていない一方で、社会にとっては巨大地震の理解は喫緊の課題である。また、断層における地震破壊プロセスは多様であり、最近ではスロー地震とよばれる、ゆっくりとした断層すべりの存在も明らかになっているが、どのような物理条件下で、通常の地震が発生するのか、スロー地震が発生するのかは分かっていない。本課題では、そのような地震現象の多様性や複雑性を、断層破壊の不確定性という観点から明らかにすることを目指している。そのために、地震波解析により、地震現象の複雑性の定量化をめざした。具体的には、数値計算(シミュレーション)によって、断層破壊の不確定性が地震現象の複雑性に及ぼす影響を調べた。通常は決定論的に計算される地震破壊シミュレーションにおいて、確率論的な揺動項を加えることで、複雑なすべりやゆっくりとした破壊伝播を再現した。また、中規模地震を対象とした断層破壊プロセス解明の新手法に取り組んだほか、火山型深部低周波地震の震源メカニズム解の推定にも取り組んだ。期間延長した本年度は、特に、学会等で議論をすすめながら、研究成果について論文執筆を進めた。
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