研究課題/領域番号 |
18K13633
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
青山 慎之介 新潟大学, 自然科学系, 特任助教 (50814232)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 硫黄循環 / 多種硫黄同位体 / 花崗岩 / 沈み込み |
研究実績の概要 |
地球史を通した花崗岩類の四種硫黄同位体分析にもとづいて、海洋地殻を含めた表層における全球的硫黄循環と、地球史を通した沈み込み帯における硫黄リサイクル史の追跡を試みる。太古代の海水硫酸や堆積岩中の硫化鉱物は硫黄の同位体異常(MIF)を持つため、これを指標とすることにより、花崗岩が取り込んだ表層地殻物質の硫黄の起源、そしてその地殻物質中の生物地球化学的循環の一部を制約することが可能である。また花崗岩の硫黄同位体異常は沈み込んだ表層の硫黄とマントルの硫黄の混合率の指標としても利用することもできる。一方、原生代以降の花崗岩についても高精度な四種硫黄同位体比を行えば、太古代と同様に表層全球的硫黄循環と沈み込み硫黄リサイクルを解読することが可能である。このような花崗岩の四種硫黄同位体研究により、表層地殻物質がない時代でも花崗岩から当時の表層硫黄循環を追跡することが可能になると期待される。 本年度は、以下の3つの研究成果を得た。(1) 新潟大学における同位体分析装置、前処理装置、抽出装置の立ち上げを行い、十分な硫黄量を含む試料から硫黄を濃縮させ、その同位体比を分析可能にした。(2) 南インド・ダルワールクラトンにおいて採取された、後期太古代花崗岩類60試料から硫黄抽出を行い、そのうち約10試料から硫黄を抽出した。また薄片から岩石試料と硫化鉱物の記載し、蛍光X線によって全岩主要元素化学組成を分析し、硫黄同位体との相関を考察した。その結果、硫黄同位体は概ね化学組成から予測される花崗岩の起源物質を反映した同位体組成を持つことが明らかになった。(3) 顕生代における硫黄循環を追跡するため、主に岐阜県北部の飛騨帯の花崗岩類を約40試料、北部・南部北上帯の花崗岩類・安山岩類を約80試料採取した。飛騨花崗岩については既に硫黄抽出、北上花崗岩については既に粉末化を終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
花崗岩岩石試料について、初年度としては想定よりも多量の岩石試料を採取・硫黄抽出・同位体分析することができた。顕生代の日本の花崗岩については、正味1, 2ヶ月程度で同位体データを得ることが可能であり、今年度中に別地域・年代の花崗岩試料に取り掛かることができる。 これまでの分析結果から、異なる年代で硫黄同位体組成が異なっていることが明らかとなっている。沈み込み硫黄循環を地球史を通して追跡するため、比較的若い顕生代の花崗岩類の硫黄同位体比を追跡した上で、初期太古代の花崗岩類の硫黄同位体比を計測し、両者の同位体比を組成を併せて統計的に比較することが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
既に硫黄抽出が済んでいる飛騨帯の花崗岩については同位体分析を、粉末化が済んでいる北上帯の花崗岩、及び共同研究者から供されたグリーンランドの花崗岩については硫黄抽出とそれに続く同位体分析を行う。これら花崗岩における年代や組成に関する議論は共同研究者らが行う予定であり、連携を取りながら研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究費で購入予定であったマイクロ天秤は前年度、異なる研究費によって購入することができたため、次年度使用額が生じた。
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