研究実績の概要 |
地球型惑星においてプレートテクトニクスが発現するためにはプレート内部に歪み集中帯を作りプレート強度を下げる必要がある。先行研究によると、歪み集中帯の中心部では2種類以上の鉱物が均一に混ざった、鉱物混合層が観察される。本研究は、大変形を伴うかんらん岩ねじり実験を行い、歪み集中帯の細粒鉱物混合層形成と化学効果を明らかにすることを目的とする。 鉱物混合層形成と歪み弱化における化学効果を明らかにするため、かんらん石と輝石の鉱物量比を変えた多結晶体(輝石10%, 30%, 45%)を作成した。安定で再現性のある高歪み変形実験ができるように、試料中心にニッケルを埋め込み試料内の応力不均一を軽減し、多孔質アルミナをピストンと試料の間に入れることで摩擦係数を上げピストンが滑りにくいよう工夫した。 鉱物量比の異なる多結晶体を用いて実験を行った。歪み速度、歪み量、温度の違う実験を複数回行った。かんらん石70%+輝石30%、かんらん石60%+輝石40%の試料は、歪み増加に伴い応力指数(n)は減少し粒径依存型の粒界すべりクリープで変形し歪み弱化が起きることが分かった。一方かんらん石90%+輝石10%の試料は、歪み増加に伴いnはわずかに減少し粒径に依存しない転位クリープで変形し歪み弱化は確認できなかった。 実験試料を用いて鉱物混合層形成の素過程を考察した。かんらん石と輝石を主に構成するSiO2と酸化メタル(MeO)の拡散速度の差に注目し「変形に起因する物質拡散」により変形による応力勾配で、かんらん石中のMeOが粒界を移動し細粒鉱物混合層が形成されるのではないかと提案した。
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