本研究では地下深部での部分溶融で発生したマグマからジルコンに代表されるウラン・トリウム農集鉱物が結晶化するまでの時間を測定するための新たな年代測定法の開発を目指す。2021年度は、2020年度までに開発した数万年~数十万年前の年代を持つジルコン試料の精確な結晶化年代および微量元素組成の局所分析法に加え、母岩の全岩化学組成、Sr-Nd-Pb同位体分析法の立ち上げを行った。全岩主成分元素はガラスビードを用いてXRF法で、微量元素組成については同じガラスビードに対してレーザーアブレーションICPMS法によって定量を試みた。その結果、標準岩石JA-1、JA-2、JB-1aの分析からその信頼性は十分に高いことが判明した。Sr-Nd-Pb同位体分析については粉末岩石試料を先行研究例に準じた手法で酸分解、元素単離を行う態勢が整った。また、標準岩石を用いた同位体分析の信頼性評価を通じてPbに関しては1/10000、Sr・Ndに関しては1/100000程度の精度での分析が達成された。これにより今後は大量の火山岩試料に対して主要10元素、微量34元素に加え放射壊変起源のSr-Nd-Pb同位体組成を測定していくことが可能となった。現在は富士・箱根の火山岩試料を対象に分析を進めており、地下におけるウラン・トリウム系列に関する元素分別の挙動を全岩分析よりモデル化し、副成分鉱物のU-Th-Pb同位体分析と合わせることで当初の目的であった、マグマの発生から鉱物結晶化までの時間に関する定量的な議論が可能になると期待される。
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