研究課題/領域番号 |
18K13640
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
森重 学 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, ポストドクトラル研究員 (70746544)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / 水の移動 / スラブ内地震 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目的は、東北地方や北海道において観測されるスラブ内地震(やや深発地震)の様々な特徴を、水の放出・移動の観点から説明可能かどうかを明らかにすることである。本年度は特に、固体とその隙間に存在する液体の運動を同時に取り扱う固液2相流理論に基づく物理モデリングを用いて、地球内部を構成する岩石の剪断変形に伴って生じる動圧力勾配が水の移動に与える影響を調べた。 具体的には動圧力に関する単純な例として、沈み込むスラブ直上に存在する低粘性層内部の水の移動を考えた。この低粘性層の形成過程に関してははまだ共通理解が得られていないが、蛇紋石などの含水鉱物が重要な役割を果たすと考えられている。まずはスラブの沈み込みによって低粘性層内部に生じる岩石の流れと動圧力勾配を、線形粘性の場合は解析的に、非線形粘性の場合は半解析的に求めた。次にそれらの結果を用いて、低粘性層内部における水の移動の時空間変化を計算した。その結果、(1)岩石の粘性率の差によって、一度低粘性層内部に入り込んだ水はそこから抜け出すことが難しいこと、(2)動圧力勾配によって、水は低粘性層内部を素早く上昇し得ること、を明らかにした。更に低粘性層内部の岩石の粘性が非線形である場合、その内部で粘性率が数桁変化し、その結果水の多くが低粘性層の底部付近に留まることも示した。 これらの内容に関する発表を日本地球惑星科学連合大会(招待講演)、アメリカ地球物理学連合秋季大会などで行い、投稿論文を現在執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
育児休業を3ヶ月程度取得し当初予定していた学会に参加できない等はあったが、本年度の目的であったスラブ直上の低粘性層内部の水の移動に関しての研究はほぼまとまり、現在投稿論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在執筆中の論文を投稿する。スラブ内部の動圧力、水の移動の計算に取り組む。また現在用いている固液2相流理論では、水の量が一度0となった場所には水は再び入り込めなくなるという問題がある。この問題を解決するための浸透率や体積粘性率の取り扱いについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3ヶ月程度育児休業を取得し、当初予定していた学会や研究打ち合わせに行かず、また論文投稿も行わなかったため。 次年度使用額は本年度に行うことができなかった研究打ち合わせや論文投稿に使用する。
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