研究課題
地震・津波発生予測の高精度化のためには、巨大地震・巨大津波の発生域となるプレート境界浅部の固着状態を推定することが必要である。しかしながら、その物理的実態には不明な点が多い。本研究はプレート境界浅部の固着状態を高解像度で明らかにすることを目的として、過去に津波地震が発生したニュージーランド東方沖ヒクランギ沈み込み帯で取得された3次元海底地震探査データを用いて、プレート境界浅部(深さ10kmまで)の3次元P波速度構造を推定した。初動走時トモグラフィ解析から、前弧付加体内の不均質構造や沈み込む太平洋プレート上の厚い堆積層構造、サブダクションチャンネルを示唆するプレート境界に沿った低速度帯の存在等が明らかになった。上記の走時トモグラフィ解析では等方媒質を仮定しているが、初動走時の観測値とP波速度モデルから計算される理論走時の差を波線の伝播方位ごとに分類したところ、海溝に直交する方向に負の走時差、海溝に平行な方向に正の走時差を示すことがわかった。つまり、海溝直交方向に速い軸を持った方位異方性が存在することを示している。暫定的な解釈として、プレート沈み込みに起因する最大水平圧縮軸によってクラックの選択的配向が進んでいることが示唆される。高分解能のP波速度構造モデルを構築し、より微弱な異方性構造まで捉えるため、波形インバージョン解析を開始した。この解析は英国Imperial College Londonの研究者と共同で実施している。本年度中に解析コードのセットアップとテストランを実施した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画のうち,初動走時解析はおおむね完了し、すでに波形インバージョン解析に着手できている。初動走時解析の結果からすでにP波速度異方性を示す成果が得られており、2年目に実施する波形インバージョン解析によって、研究のさらなる進展が見込める。
波形インバージョン解析によってより精緻な3次元P波速度構造モデルの構築を進めるつつ、異方性パラメータの空間分布を求める。得られた結果を他の共同研究機関が実施している反射法データに基づく既存断層の構造や地震活動から推定される応力場と比較し、結果の妥当性を検証する。
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地震
巻: 72 ページ: 1-16
GeoPRISMS Newsletters
巻: 40 ページ: 14-15