研究課題
地震・津波発生予測の高精度化のためには、巨大地震・巨大津波の発生域となるプレート境界浅部の固着状態を推定することが必要である。しかしながら、その物理的実態には不明な点が多い。本研究はプレート境界浅部の固着状態を高解像度で明らかにすることを目的として、過去に津波地震が発生したニュージーランド東方沖ヒクランギ沈み込み帯で取得された3次元海底地震探査データを用いて、プレート境界浅部(深さ10kmまで)の3次元P波速度構造を推定した。その際、地殻の応力場に敏感な地震波異方性に着目し、その3次元分布を初動走時トモグラフィ解析を用いて明らかにした。得られた速度構造モデルから、付加体内の分岐断層周辺において、周囲より大きくプレート沈み込み方向に速い軸を持つ異方性が存在すること、海溝海側と陸側の前弧海盆では海溝軸に沿った方向に速い軸を持つ異方性が存在すること、などを明らかにした。これらの異方性の空間分布は、プレート沈み込みと上盤内の構造不均質による応力場によってクラックが選択的に配向することに起因すると解釈される。また、付加体内の異方性には粘土鉱物に富む堆積層も寄与していると考えられる。これらの成果について、学術論文を投稿する準備を進めた。本研究は当初2019年度までの予定であったが、本年度末に参加を予定していた国際ワークショップが新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなった。別の学会で成果発信を行うため、期間延長の措置を取った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の通り、P波速度異方性の詳細な空間分布を推定することに成功し、間もなく学術論文として投稿できる見込みである。
研究成果の発信の場として参加を予定していた国際ワークショップが新型コロナウイルスの影響によってキャンセルとなったため、補助事業期間延長を申請した。2020年度中に別学会において成果発表を行う予定である。
新型コロナウイルスの影響により当初予定していたニュージーランドでのワークショップがキャンセルとなったため。次年度に別の学会に参加して本研究成果を発信する。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
GNS Science Report
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