研究課題
地震・津波発生予測の高精度化のためには、巨大地震・巨大津波の発生域となるプレート境界浅部の固着状態を推定することが必要である。しかしながら、その物理的実態には不明な点が多い。本研究はプレート境界浅部の固着状態を高解像度で明らかにすることを目的として、過去に津波地震が発生したニュージーランド東方沖ヒクランギ沈み込み帯で取得された3次元海底地震探査データを用いて、プレート境界浅部(深さ10kmまで)の3次元P波速度構造を推定した。その際、地殻の応力場に敏感な地震波異方性に着目し、その3次元分布を初動走時トモグラフィ解析を用いて明らかにした。2019年度までにトモグラフィ解析は大方終了したため、2020年度は、得られたP波速度異方性構造の解釈と先行研究によるS波速度異方性や掘削データに基づく応力場との比較検討を行った。P波・S波異方性の向きとborehole breakoutによる主圧縮軸の向きはよい一致を示すことから、地震波速度異方性が応力場をよく反映していることを示した。また、海溝に近い前弧付加体内ではP波の速い軸が海溝に直交する方向であるのに対して、海溝から40km以上陸側の領域では海溝に平行な方向を示すことがわかり、この場所を境に上盤プレート内の断層構造およびプレート境界での固着状態が変化する可能性を示唆した。これらの成果について、国際学術誌JGR Solid Earthに論文を出版した。本論文を沈み込み帯浅部の詳細なP波異方性構造を推定した世界初の論文として高い評価を受け、Editors' Highlightsに選出された。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 125 ページ: e2020JB020433
10.1029/2020JB020433
Impact
巻: 2020 ページ: 20~22
10.21820/23987073.2020.3.20
http://www.jamstec.go.jp/rimg/j/topics/20210115.html