前期原生代の地層からは真核生物に由来と推察されている形状化石の産出が複数報告されている。特に中央アフリカ・ガボン共和国に産する前期原生代地層(約21億年前)からは、最古の真核生物と考えられる形状化石(ガボン化石)が報告されているが、地層の年代制約が不十分であるためガボン化石の産出年代については議論が続いている。従来の研究では、凝灰岩から抽出したジルコンのU-Pb年代を用いてガボン共和国前期原生代地層の年代制約を行なっているが、メタミクト化に伴う放射性起源Pbの欠損が深刻であるため、信憑性に欠けるといった問題があった。本研究では、有機物に富んだ黒色頁岩の年代及び硫化鉱物の生成年代の決定に最適なRe-Os年代測定法を用い、ガボン化石が産出する黒色頁岩の層準に加え、硫化鉱物で充填されているガボン化石に直接的に絶対年代を加えることで、地球生命史の中でも極めて重要なイベントの一つである、真核生物誕生時の古海洋環境変動を読み解く基盤構築を目的としている。本年度は、去年度に引き続き、4つに細分されるガボン共和国前期原生代堆積盆地のうち、昨年度に調整したラストュールヴィル地域に産する黒色頁岩試料のRe、Os濃度測定を行なった。また、測定したRe、Osのキャリア鉱物の特定を行うため、S濃度測定前処理の検討を行なった。さらに、上記地球化学分析と並行し、フランスビルヴィル地域にて採取したガボン化石(約300試料)を充填している硫化鉱物を記載するため薄片作成、及び作成した薄片試料のEDS搭載走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)観察を行った。
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