研究課題
2019年度は、前年度までに取得した水生爬虫類コリストデラの椎骨のマイクロフォーカスCTスキャンデータについて、新たに導入したCTデータ閲覧ソフトウェアOsiriXおよび解析ソフトAmiraを用いて骨内部構造の解析を行った。骨内部構造からは3次元的な観察による成長の中心の厳密な特定と、薄片データとの照合を行うことが出来、前年度に確認された鉱物化した脊索構造に加え、成長中心付近で楕円球状の空洞と、これを横断するような隔壁状の構造が確認された。最近の発生学的研究によって、椎体の発生初期には脊索鞘において体節ごとの周期的な鉱物化が起こることにより、骨芽細胞の集合と椎骨の膜性骨化が促されるとされているが、本研究成果ではさらに、絶滅した爬虫類では脊索内部においても椎骨形成初期に縞状の石灰化が起こっている可能性が示唆された。このCT解析結果は、組織切片を用いた解析結果と合わせて国際会議において発表された。また、昨年度得られたフーペイスクス類の椎骨発生に関わる成果にさらに新たなデータを加え、国際会議にて口頭発表を行った。これらの実績に加え、ソフトウェアを用いた骨内部構造の解析手法および成長中心の推定手法を応用し、本邦より得られている中世代四足動物化石の分類学的研究にも貢献した。また、北海道における野外調査では、現地研究者の協力により大型の首長竜化石サンプルが採集され、本研究で不足していた大型爬虫類標本の確保にも成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
CTデータ解析の結果、画像は予想以上に鮮明に得られた。特に、三畳紀のPachystropheusについてはほとんどの標本で骨内部のリモデリングが進行していたために、他のジュラ紀以降のコリストデラ類とは異なり石灰化した脊索が保存されにくいのではないかという予察的な結論に至った。このように、一部の爬虫類化石については、工程的に最も困難を伴う切片作成による骨組織学的解析の必要は必ずしもなくなったと言え、研究成果の集大成に向けて大きく前進したといえる。
今後は、コリストデラ類を主題として用いた研究と、フーペイスクス類を主題とした研究の2本に論文化の目標を絞り、必要最小限の追加データをCT及び切片から得たのち、論文の執筆を進めていく。現在欠けているデータとしては、比較用のワニ類幼体、カメ類幼体、有鱗類(ヘビもしくはトカゲ)の椎骨薄片およびCTスキャンデータが挙げられるが、これらは東北大学および有償撮影サービスに依頼することが決定している。現在不安定な社会情勢を踏まえると具体的な期日については即座に決定することは難しいが、現在安全等に十分注意しながら、遂行の計画を立てている。
昨年度は大型の研磨機について購入を検討していたが、前年度導入した偏光顕微鏡に付随して使用する顕微鏡カメラの購入見積もりの際、一眼レフなどの安価な顕微鏡カメラでは、組織切片を動かしながら目的の骨組織構造を撮影することは難しく、PCソフト上で簡易操作ができる顕微鏡対応のカメラを購入する必要が生じた。同製品は1000千円程度の価格となり、同様の価格帯の研磨機と同時購入することは予算計画上困難である。研磨機購入は有償で研磨依頼するなどの代替手法が確立されたため優先順位は低く、顕微鏡カメラの購入を優先することとした。
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https://www.tcu.ac.jp/news/newsrelease/20200210-27918/