本研究課題においては主に、コリストデラ類、フーペイスクス類、魚竜類、首長竜類、モササウルス類の5系統の水生爬虫類の椎骨について、マイクロフォーカスCTスキャンおよび薄片検鏡を用いてその構造の解析と形態発生学的な検討を行った。本研究で取り入れたマイクロCTによる非破壊解析との統合手法により、骨内部構造からは3次元的な観察による成長の中心の厳密な特定と、薄片データとの照合を行うことが可能となった。 2018年度には、ロシア極東地域の下部三畳系から得られた魚竜型類の椎骨化石について精密な微細構造解析を行い、これと層序学的な検討をあわせて、魚竜型類において前後に骨を脊索が貫く脊索型椎骨の発達が中生代の最初期にはすでに起こっていたことを明らかにした。この結果についてはInternational Congress of Paleontologyにて発表した。 2019年度には、コリストデラ類においては鉱物化した脊索構造に加え、成長中心付近で楕円球状の空洞と、これを横断するような隔壁状の構造が確認され、絶滅した爬虫類では脊索内部においても椎骨形成初期に縞状の石灰化が起こっている可能性が示された。この結果についてはSociety of Vertebrate Paleontology Annual Meetingにおいて発表を行った。 フーペイスクス類については、椎骨発生において外骨格である皮骨要素が延長して棘突起と連続した構造となるという、羊膜類においては例のない発見があり、これについてInternational Symposium on Paleohistologyにて口頭発表を行った。 またこれらの実績に加え、ソフトウェアを用いた骨内部構造の解析手法および成長中心の推定手法を応用し、本邦産の首長竜類およびモササウルス類椎骨の分類学的研究にも貢献し、成果の一部は現在論文として投稿中である。
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