研究課題/領域番号 |
18K13648
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
半田 直人 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (60792009)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アフリカ / サイ科 / 動物相 / 古生物地理 / 新生代 / 進化 / 哺乳類 |
研究実績の概要 |
本研究はクロサイ族の多様性・放散の変遷とその要因の解明を目的とする。そのために、より客観性の高いクロサイ族全種の系統の推定、経時的な種数と分布の変化の総括、およびサイ科の群集変遷と古環境変化、ウシ科・ウマ科の多様性変化と比較し、その要因解明を目指す。 前年度同様、今年度においても新型コロナウイルスの影響により海外調査の実施は叶わなかった。よってこれまでの調査によるデータと文献情報に基づいて以下の調査を実施した。 1)Paradiceros mukiriiの形質の再評価および分類学的位置の推定、2)クロサイ族全種の系統推定、3)中新世アフリカのサイ科群集と同時期のウシ科およびウマ類の群集変遷の比較。 結果として1)および2)については検討がほぼ遂行できた。すなわち、Paradiceros mukiriiはクロサイ族の祖先系に位置する、クロサイ族は2系統が推定され、一方は現生種およびユーラシア系統を包含する。もう一方はアフリカ固有の絶滅種からなるグループを構成する。このうち一部標本についてはクロサイ族以外の可能性が示唆された。3)については後期中新世初期の東アフリカにおいてサイ科の種数は減少する一方で、ウマ科およびウシ科の化石記録が増加する傾向が認められtた。引き続き化石記録の収集に努める必要がある。とくにウシ科は、アフリカにおける最初期の記録について分類学的位置および年代について検討を要すると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロサイ族の祖先系とされるParadiceros mukiriiの形質変異を再検討した。これまでの検討に加え、臼歯に見られる形態形質の変異をさらに調査し、その優占頻度を明らかにした。とくに先行研究で記載の無い標本の情報を加えることで、調査対象としたParadicerosの同一産地の標本を網羅することができた。次にこれを踏まえてクロサイ族およびParadicerosの系統関係を推定した。上記検討による形質状態とこれまでのデータを用いてPAUPによる系統解析を行った結果、クロサイ族は単系統を支持し、Paradicerosはその最も基盤的位置と推定された。さらにクロサイ属(Diceros)は2系統が推定され、現生種であるクロサイは、北~東アフリカ・地中海東部および中国の種と単系統を構成し、多様な分布をなす種群と近縁であることが示唆された。もう一方の系統は東アフリカの後期中新世~鮮新世で絶滅した種群から構成される。また、従来D. douariensisとされた標本のひとつは、本調査ではDihoplus属と姉妹群となった。 またサイ科とウシ科・ウマ科の多様性比較のため、中新世の東アフリカのウシ科・ウマ類の化石記録を収集し、サイ科のそれと比較した。従来の見解通り、ウマ類は後期中新世初期から産出が改めて確認できた。しかしその種数については3種ほどであり、多様性は比較的低い。ウシ科は後期中新世以降、20種近くが産出しており、サイ科やウマ科とは反対にその多様性は著しく高い。データベースによれば、中期中新世のアフリカにおけるウシ科化石も確認されているが、近年の分類体系と異なるように見受けられ、その産出年代とともに分類学的位置の再検討が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
本調査でDihoplus属と姉妹群となった標本について、他の研究例ではその分類がアセラテリウム族、またはエラスモテリウム族とする意見がある。そのため、今後これらのタクサを含めた系統解析を再度実施して、より詳細な系統的位置を検討したい。 ウマ類およびウシ科群集とサイ科群集との比較について、引き続き化石記録の収集に努める。とくに対象を北アフリカおよび南アフリカの中新世化石記録まで拡大し、より広範囲における群集変遷を比較対象とする。また、中期中新世のアフリカにおけるウシ科の出現時期について、データ元の文献情報の確認および分類体系の修正を試みる。これらを踏まえて、アフリカの中新世における環境変動(乾湿の季節性、森林~草原環境の拡大時期)の影響を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響による延長申請のため。
|