最終年度である本年は,現生動物の飼育実験で得られた歯エナメルと呼気中の炭素および酸素の安定同位体比のデータ解析を進めた.得られた成果の一部について,前年度までに国際誌に受理された論文の中で,植生と食べ物の間に生じる同位体分別値として用いた.これまでの研究では小動物の同位体分別値として実験的に求められていた値は誤差が大きく,そのため小動物の化石種には利用することができない状態であった.本年度の解析では,歯の萌出タイミングが異なる3種の小動物を使用することで,歯芽の形成から萌出まで連続して安定した結果を得ることが可能となった.前出の論文では,沖縄県の離島の洞窟で発見された食虫性コウモリについて,ヒトが介入した絶滅イベントであることを初めて明らかにした.SNSを活用したプレスリリースにより保全古生物という新しい学問領域から注目を集め,本年度は国際学会の招待講演として発表を行った.本プロジェクトに直接関連したアウトリーチ活動として瑞浪市化石博物館およびいばらき子ども大学にて,それぞれ哺乳類化石に関する実習と入門講座を開いた.
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