本研究では,粘着テープのはく離強度が試験条件に依らない材料固有の指標となるように評価する手法を提案した.一般的に,粘着テープのはく離強度評価には,被着体に貼り付けた粘着テープを端から剥がすピール試験と,粘着面に押し付けたプローブを剥がすプローブタック試験が用いられ,個別の評価指標とされている.しかし,ピール試験のはく離過程における粘着剤層の荷重分布は,粘着剤を一様に引きはがすプローブタック試験で得られる荷重の推移に類似しており,両者は同一の特性を単に別の視点で見ているに過ぎないことが示唆されている. そこで,同じ粘着テープに対してピール試験とプロ―ブタック試験を個別に行い,両者のはく離仕事をはく離過程における粘着剤のひずみ速度に着目して比較した.結果,はく離仕事とひずみ速度の関係は,両方の試験で同等であることが確認できた.重合度を変えることで被着体へのぬれ性ならびに粘性を変えた粘着テープでも,ピール試験とプローブタック試験で個別に求めたはく離仕事とひずみ速度の関係は同等であり,テープごとに違う関係を示すことができた.一方で,同じ材質で粘着剤厚さを変えた場合には,ピール試験とプローブタック試験の結果は一致するものの,はく離仕事とひずみ速度の関係は異なる結果となってしまった.現状の評価方法によるはく離仕事は,はく離に伴って生成した表面エネルギーで消費されたことになっているが,実際には粘着剤の変形によってもエネルギーが消費されているために,粘着剤厚さによる結果の違いにつながったと考えられる.今後,はく離仕事における表面エネルギーと粘着剤層での散逸エネルギーの割合に着目していくことで,材料固有のはく離強度評価手法の確立が期待できる.
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