研究課題/領域番号 |
18K13655
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
海瀬 晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (60802353)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体機能性材料 / 超弾性合金 / 粒界脆化 / 機械的性質 |
研究実績の概要 |
本研究はホイスラー構造を持つAuCuAl合金の延性化機構の解明と生体機能材料への応用を目的とする.ホイスラー構造をもつ金属間化合物は,強磁性形状記憶合金,熱電変換材料などさまざまな機能材料としての応用が期待させるが,多結晶では非常に脆い.このためからAu2CuAl基合金の粒界脆化の機構を解明することで本合金の生体機能材料への実用化の可能性を検証すると共に,生体機能材料として使用するため,耐食性や体積磁化率の評価を行う. 本年度は,(1)生体機能材料としての耐食性,体積磁化率の評価,(2)マイクロワイヤー材の作製,(3)双結晶のミクロンサイズ試験片の作製を行った. (1)0.9mass%NaCl溶液と反応を加速させるため,乳酸によりpHを調整した0.9mass%NaCl溶液内で電気化学的手法を用いて耐食性の評価を行った.腐食電位付近でCuの活性溶解が見られたもののいずれの溶液においても生体内での使用に問題の無い高い耐食性を示した.また,体積磁化率については人体の体積磁化率に近い値を示した. (2)FIBにより作製する角柱ミクロンサイズ試験片は板材を用いていたが,双結晶の試験片を作製するに当たり,Au2CuAl基合金は電解研磨が難しく,粒界を含む加工面を探すの非常に時間がかかるため,実際の血管内治療機器への応用も見据え,マイクロワイヤー材の作製を行った.本合金系は,脆く,引き抜き加工が困難であるため,Au-Cuチューブ内にAl線を挿入したクラッドワイヤーを作製し極細線化し,その後,熱処理を行うことで合金化させた.この手法により直径100μmのワイヤー材が作成可能であり,特許出願も行った.また,拡散挙動についても明らかにした. (3)作製したマイクロワイヤー材は断面に結晶粒を3個ほど含んであり,そこから圧縮軸方向に 垂直に粒界を導入した双結晶の作製に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,本年度は複雑な粒界形状の形成過程と粒界特性の変化は透過型電子顕微鏡を用いた組織観察と微小試験機を用いた双結晶の圧縮試験により解明する予定であったが,双結晶のマイクロサイズ試験片の作製が順調に進まなかったため,翌年度以降に行う予定であった,微小機器としての機械的性質の評価と生体機能材料としての耐食性の評価を先に行った.しかし,いずれにおいても研究計画通りに研究は順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,まず,作製に方法の確立できた双結晶のミクロンサイズ試験片をもちいて,微小材料試験機により機械的性質,形状記憶・超弾性特性を明らかにしていく予定である.また,同様に,微小顕微試験により臨界き裂長さを求め,粒界特性を明らかにし,粒界脆性の抑制機構の解明も行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,既存の装置,実験器具の使用で研究を遂行できた為,物品の購入をほとんどせずに済んだため.次年度では,繰り越した資金と合わせ,主に,実験器具の購入に充てていく予定である.また,合金原料等の消耗品の購入に充てる
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