初年度に実現したナノベルトの断面アスペクト比制御により,ゼンマイ形成に最適な形状のナノベルトを創製し,直線状のナノベルトから長手方向に異なる曲率を有するナノ構造体,すなわちナノゼンマイの創製に成功した.具体的には,マイクロカンチレバー上に分離した単一のナノベルトに白金を約 30~50 nm 製膜して残留応力を付与し,熱処理によって自己変形を誘起した.作製したナノ構造は基板(マイクロカンチレバー)側から徐々に曲率が大きくなり,ナノベルトからゼンマイ形状に変化した.過去に作製した金属被覆ナノコイルに比べると,明らかにピッチを抑えた形状制御に成功しており,直線状のナノベルトから長手方向に曲率が変化するナノ構造体すなわちナノゼンマイの創製に世界で初めて成功した.また,本研究では製膜方法の工夫により,コア流動法を利用して様々な独自のらせん状ナノ構造体が創製できることも確認した.一方,ナノゼンマイには未だ10 nmオーダーの若干のピッチが発現しており,当初予定していた帯電反発によるアクチュエーションには至らなかった.今後は,効率的な帯電反発によるナノゼンマイのアクチュエーションを実現するため,周り込み粒子の制御に着目した新たな製膜手法を導入し,高度なピッチ制御を実現したい.これにより,ナノゼンマイによる高密度エネルギー貯蔵の実現を目指す. さらに,当初未計画であったナノベルトの高感度ガスセンサへの応用を実施し,上述の断面アスペクト比制御により単結晶ナノベルト上のガス検出に有意な結晶面の存在を明らかにした.本技術を応用することにより,露出結晶面の制御による新たな機能性ナノ材料の創出が期待できる.
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