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2018 年度 実施状況報告書

マルチスケール実験解析に基づく応力腐食割れ機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K13660
研究機関青山学院大学

研究代表者

蓮沼 将太  青山学院大学, 理工学部, 助教 (50709764)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード応力腐食割れ / マルチスケール解析 / 水素 / アルミニウム合金 / 材料強度
研究実績の概要

近年,高圧水素を用いた燃料電池自動車などが実用化されている.しかし,高圧水素容器に用いられるアルミニウム合金に発生する応力腐食割れ(SCC)は,高圧水素容器の口金破壊というリスクの高い破壊事故の原因となることが明らかになってきた.このき裂進展メカニズムはディンプル破壊であり,大気中の水分から生成された水素の寄与が指摘されているが,メカニズムは明らかになっていない.また,アルミニウム合金の疲労き裂進展にも湿度の影響があり,そのメカニズムを解明することはSCCメカニズム解明に有益だと考えられる.本研究では,湿潤環境中におけるアルミニウム合金のSCCき裂進展および疲労き裂進展メカニズムを解明することを目的とする.
本年度の研究では,アルミニウム合金の湿潤環境中のSCC試験および水素拡散-転位動力学連成解析を行った.
SCC試験では,試験を途中で中断し試験片を切断することで,き裂先端のボイド分布を調べた.切断面を観察した結果,き裂前方でボイドが発生し,それがき裂と合体することで進展していることが観察できた.また,電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いた評価を行った.塑性変形と関連するパラメータであるGrain Reference Orientation Deviationが大きい領域は,乾燥環境よりも湿潤環境の方が大きかった.そのため,湿潤環境では水素助長局所塑性変形機構により延性が助長される可能性が示された.
水素拡散-転位動力学連成解析では,引きずり応力に及ぼす速度変動の影響を検討した.転位の速度をsin波状に変化させ,水素環境中の繰返し荷重下における引きずり応力を調査した.低速度域では繰返し速度の増加とともに引きずり応力の最大値が減少したが,中速度域では増加していた.高速度域では,引きずり応力は繰返し速度に依存しなかった.この解析結果を基にして引きずり応力のモデル化を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SCC試験については,すべての材料および環境のSCC試験が終了した.SCC試験が終了したため,学会発表を行った.さらに,試験片切断によるボイド分布観察手法の有効性を確認した.この手法を用いて,2019年度はSCCメカニズムの検討を行う.
水素拡散-転位動力学連成解析については,シミュレーションプログラムを作成し,引きずり応力に及ぼす速度変動の影響をモデル化することができた.水素拡散-転位動力学連成解析の検討が順調に進んだことから論文投稿を行った.このモデルを,転位動力学に基づくき裂進展シミュレーションに適用することで,2019年度は湿潤環境中の疲労き裂進展メカニズムを検討できる.
以上のことから,研究計画はおおむね順調に進んでいるといえる.

今後の研究の推進方策

SCC試験については,2018年度に確立したボイド分布観察手法を用いてSCCメカニズムの検討を行う.具体的には,切断面の元素分析や3次元観察を行う.また,EBSD観察をより詳細に行う予定である.以上の観察からアルミニウム合金の湿潤環境におけるSCCメカニズムを検討する.
水素拡散-転位動力学解析については,2018年度に作成したプログラムを用いて転位間相互作用応力に及ぼす水素の影響をモデル化する予定である.2018および2019年度に作成したモデルを,転位動力学に基づくき裂進展シミュレーションに適用し,水素環境中のき裂進展シミュレーションを行う.それにより,湿潤環境中の疲労き裂進展メカニズムを明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

2018年度に購入した物品の端数分が残額となった.次年度使用額と2019年度助成金を合わせて試験片加工費に使用する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 高圧水素容器用アルミニウム合金の湿潤ガス応力腐食割れ特性とき裂進展機構2018

    • 著者名/発表者名
      白輪地峻輝,蓮沼将太,小川武史
    • 学会等名
      日本高圧力技術協会 平成30年度秋季講演会

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公開日: 2019-12-27  

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