研究課題/領域番号 |
18K13661
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
前田 知貴 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 助教 (00754730)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブロック共重合ポリマ / コンポジット / 複合材料 / 相分離 / ナノ分散材 |
研究実績の概要 |
ポリマ材料にナノ分散材を複合化することで,ポリマ材料の機能性を飛躍的に向上させることが可能である.本研究では,ナノ相分離構造を発現するブロック共重合ポリマを用いることで,次世代の高機能性複合材料を開発することを提案している.ブロック共重合ポリマをベースとしたナノ複合材料を考えるにあたり,ナノ分散材のサイズとブロック共重合ポリマのナノ相分離構造のサイズはおおよそ等しいため,「ナノ分散材とナノ相分離構造のサイズがナノ複合材料の機能性にどのように影響するか」という学術的「問い」が生まれた.そこで,本研究では,ナノ相分離構造のサイズを基準としたナノ分散材の分散状態の定量評価を実施することとした. 当該年度は,溶液中でのブロック共重合ポリマとナノ分散材の分散状態の定量評価を実施した.具体的には,1.ブロック共重合ポリマの合成,2.ブロック共重合ポリマをベースとしたナノ複合材料の作製,3.ナノ複合材料におけるナノ分散材の分散状態の定量評価の3点に分けて実施した.1.では,アニオン重合法により,分子量分布の狭いブロック共重合ポリマを合成した.これにより,ブロック共重合ポリマの溶液中の相分離構造を制御することが可能となった.2.では,粘土鉱物であるラポナイトをナノ分散材として用い,1.で合成したブロック共重合ポリマと複合化することで,ナノ複合材料を作製した.このナノ複合材料は,室温では液体であったが,体温ではゼリー状の固体であった.このことから,医療応用に向けて有用な材料であると考えられる.3.では,コントラスト変調中性子小角散乱法によりナノ複合材料の分散状態の定量評価を実施した.結果として,ブロック共重合ポリマの相分離構造は,ナノ複合材料におけるナノ分散材の形状の影響を受け,球状から楕円状に変形することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,溶液中でのブロック共重合ポリマとナノ分散材の分散状態の定量評価を実施することを目的としていた.この目的を実現するために,1.ブロック共重合ポリマの合成,2.ブロック共重合ポリマをベースとしたナノ複合材料の作製,3.ナノ複合材料におけるナノ分散材の分散状態の定量評価という3つの要素を掲げていたが,実施上の課題を解決することで,無事に達成することができた.結果として,医療応用が期待されるナノ複合材料を開発できたこと,さらに,ナノ複合材料中のブロック共重合ポリマの相分離構造が変化することを明らかにしたことから,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,(a)これまでに評価してきたナノ複合材料のより詳細な解析および(b)ブロック共重合ポリマのナノ相分離構造の形状に着目した,ナノ分散材の分散状態の定量評価を実施する予定である.(a)では,ナノ複合材料の濃度依存性の評価や,マルチスケールの構造解析を実施する.(b)では,1.ブロック共重合ポリマの合成において,ナノ相分離構造の形状(球状,柱状など)を制御するために,ブロック共重合ポリマの分子量比MwA/MwBを制御する(ただし,MwA+MwB:一定).実施方法は,平成30年度で確立した手法を踏襲する.
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