研究課題/領域番号 |
18K13662
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小島 朋久 中央大学, 理工学部, 助教 (70802734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キャビテーション / 圧力波 / 破壊力学 / 衝撃 / 連続体力学 / 流体構造連成 |
研究実績の概要 |
本研究では固体の破壊力学におけるき裂の生成と進展のアナロジーをキャビテーション気泡の生成と波面伝播に適用することで,動的キャビテーション波面発生を予測する新しい学理を創出することを目指している. 当該年度は前年度に得た実験結果を基に,固液連成界面における気泡核成長の力学モデル構築を継続した.固液界面に設置された気泡核周りの力のつり合いに関する理論解析を行い,固液,気液界面エネルギの影響を含めた圧力のつり合い方程式を導出した.導出した式を発展させ,Blakeのキャビテーションしきい値を参考にして,固液界面における気泡核が膨張する圧力の臨界しきい値を導出した.導出した理論式によるしきい値を前年度の実験結果と比較すると,界面エネルギの変化に伴う臨界圧力の変化の傾向を表せていた.ハイスピード撮影された気泡の運動と後述する数値解析の結果より,固体の破壊力学におけるグリフィスのエネルギ平衡の導出過程を参考にして,圧力変動に起因して流体が圧縮されることにより流体自体に蓄えられるエネルギを理論に含め,導出した式を修正する必要があることが示唆された. 構築した力学モデルを境界の影響がない流体中における気泡発生にも適用可能となるよう発展させるため,周囲境界の影響を無視できるほど十分に大きい水槽の中に気泡を生成し,水中火花放電により発生させた圧力波を伝播させる実験装置を構築し,圧力波の伝播に伴う気泡の運動を明らかにした.当初の予定にはなかったが,気泡周囲における圧力分布の変動を測定するため,応力発光体を用いた圧力変動の測定手法の適用を試みた. さらに,ANSYS Autodynを使用して固液連成界面近傍に存在する気泡に圧力波が入射した際の気泡の運動を再現可能な数値解析モデルを構築した.構築した数値解析モデルによる解析結果から,圧力波の伝播に伴って不均一に変化する気泡周囲の圧力変動を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度/令和元年度は前年度に提案した力学モデルの発展と数値解析への実装を目標にして研究を行い,以下の3つの面で目標を達成した. ①固液界面に設置された気泡核周りの力のつり合いに関して理論解析を行い,固液界面における気泡核が膨張する圧力の臨界しきい値を導出し,前年度に行った実験結果における,界面エネルギの変化に伴う臨界圧力の変化の傾向を表すことができた.具体的には,固液界面に設置された気泡核に関して固液,気液界面の界面エネルギの影響を含めた圧力のつり合い方程式を導出した.次に,導出された式を発展させ,Blakeのキャビテーションしきい値を参考にして,固液界面における気泡核が膨張する圧力の臨界しきい値を導出した.導出した理論式によるしきい値を前年度に行った実験結果と比較したところ,界面エネルギの変化に伴う臨界圧力の変化の傾向を表すことができていた.ハイスピード撮影された気泡の運動の様子と,数値解析の結果より,固体の破壊力学におけるグリフィスのエネルギ平衡の導出過程を参考にして,圧力変動に起因して流体が圧縮されることにより流体自体に蓄えられるエネルギを理論に含め,導出した式を修正する必要があることが示唆された. ②構築した力学モデルを境界の影響がない流体中における気泡発生にも適用可能となるよう発展させるため,周囲境界の影響を無視できるほど十分に大きい水槽の中に気泡を生成し,水中火花放電により圧力波動を発生させ気泡に向けて伝播させる実験装置を構築し,圧力波の伝播に伴う気泡の運動を明らかにした. ③ANSYS Autodynを使用して固液連成界面近傍に存在する気泡に流体側から圧力波が入射した際の気泡の運動を再現可能な二次元軸対称の数値解析モデルを構築した.構築した数値解析モデルによる解析結果から,圧力波の伝播に伴って不均一に変化する気泡周囲の圧力変動を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度にはこれまでの総括として,前年度までに構築した力学モデルおよび数値解析モデルの検証と発展を行う.固体の破壊力学におけるグリフィスのエネルギ平衡の導出過程を参考にして,圧力変動に起因して流体が圧縮されることにより流体自体に蓄えられるエネルギを理論に含めることにより,前年度までに構築された力学モデルを改良する.改良した力学モデルを固体の破壊じん性に相当するような流体の物性値として前年度までに構築した数値解析モデルに実装することを継続して試みる.さらに,構築した数値解析モデルを境界層流れ等の現象に適用して数値解析を行い,波動が伝播するような速度域よりも遅い流れ場においてもキャビテーションの発生を予測できるか検証する.
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